アンシン side
パート決めが終わったもののあなたは何も言わず、ずっと黙って床を見つめていた
その原因はきっとさっき起きたヒョン達の喧嘩だろう
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あなたの異変に気づいたのは喧嘩が始まってすぐだった
いつもなら誰かが喧嘩し始めたとき、あなたが止めに入って仲裁をしていた
それが自分に関係のあることでもないことでも
でも今回は違った
あなたを巡って起きた言い合いなのにあなたは仲裁をするわけでもなく、言葉でも止めようとはしなかった
正確に言えばあなたの気配が消えていた
言い合いが始まって少し経った頃、やっとあなたのことを思い出して周りを見た
いつもなら感じるあなたの柔らかい気配が微塵もなかったからだ
そしてあなたは僕の隣にいたことに気づく
咄嗟にでたひとり言に慌てて周りを見渡したが、誰も聞こえなかったみたいで皆ヒョン達の喧嘩を見ていた
そしてもう一度あなたの方を向いて「喧嘩どうやって止めようか?」と話しかけようとしたときに
そこでようやくあなたの顔が青ざめていることに気づいた
大丈夫か?なんてこの状況で聞けるわけがなかった
あなたなら絶対に大丈夫じゃなくても大丈夫だと言うはずだから
だから代わりに「どうしたの」と聞く
それでもあなたは答えない
答えないというよりかは"僕の声が聞こえていない"に近かった
今まであなたに話しかけて無視されたことはないし、どんな発言にもあなたは必ず拾ってくれる
だからこの状況があまりにもイレギュラーだった
僕がいくら名前を呼んでもあなたはずっとどこか遠くを見つめていて反応しなかった
そして最後に出た「あなた…」という必死の囁きでようやくあなたと目が合った
あなたの意識がまだあったことにほっとしつつ、なんとかこの喧嘩からあなたを離さないといけないと思い
ヒョン達に声をかけ今に至る
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さっきのことを思い出しながらあなたの背中をリズムよくとんとん、とする
すると落ち着いてきたのか今まで閉ざされていたあなたの口が開いた
こういう時でもお礼を忘れないあなたが今は恨めしかった
素直に助けてと言えばいいのに、誰でもいいから頼ればいいのに、全部自分で解決しようとするのがもどかしくて
普段ならあなたが言うまで待つが今回はそういう訳にはいかず、直球に聞く
少しの沈黙の後
そう言われ、はっとする
これだけステージへの愛が、ファンへの愛が強いあなたが呆気なくやめたのにはそれなりの理由がある、と
あなたはやめたくてやめたんじゃない
やめさせられたんだ
その事実を改めて痛感した
それと同時に事務所があなたをここまで追い詰めなきゃいけなかった理由が知りたくなった
聞いてもいいことなのか考えたが、自分の中で考えたって答えは出てこない
だからあなたに聞こうとしたときに
ちょうどあなたがスタッフさんから呼び出された
いつもよりも真剣な顔であなたを呼ぶスタッフに違和感を持ちながらも
と言いながらヒョン達の喧嘩についてかな…と心の中で考えていた
このときあなたを引き止めなかったことを後悔する日がくるなんて微塵も思わなかった












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!