人より愛が重い自覚はある。恋人を一人にさせたくないし、相手のことを誰よりも知っていたい。いつだってそばにいたい。
俺が依存すればするほど相手は反発するようになる。泣き喚いたり、別れを切り出されるだけならまだいいほう。
人はいつだって自分が一番大切で、なにかあれば平気で攻撃する。かわいいと思っていた女の子が悪魔のように豹変していく。それを見て、きっとこの子に必要なのは俺じゃないと思った。
恋というものに対しての懐疑的な考えが抜けきれず、大学に入ってからは一人も恋人ができなかった。
いつも作り笑いを浮かべてやり過ごす。会社に勤め始めた頃、女性との恋愛に体が拒絶反応を起こすようになり、俺は女性恐怖症に近い状態に陥っていた。
耐えきれなくなり急足でトイレに向かい、大量の薬を流し込む。
ある日から公園で男の子を見かけるようになった。
中学生くらいだろうか。とても容姿がととのっていて、女の子と見間違えそうなくらいだった。しかし、俺が女性に感じる嫌悪感はなく素直に綺麗な子だと思った。
ストーカーと言われても仕方ないが、俺は彼のことを探すようになった。最近学校を休みがちなこと、よく夜中に出歩くことなど沢山のことを知った。名前こそ知らない彼に恋とも言える感情を抱いた。
この日も彼はブランコで揺られていた。しかし、いつもと違って頭から水を被って濡れていた。
そのとき、彼の口が動いた。
ぼそっと聞こえただけで、聞き間違いの可能性だってある。でも虚な目が彼の孤独を物語っていて無視することなんてできなかった。
でも彼は迷わず僕の手をとった。彼があまりにすぐ受け入れるものだから俺はそれ以上何も言えなくなってしまう。これが、誘拐事件の始まり。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。