私はその日、何度も鏡の前に立っては着替え。
あーでもない、こーでもない。と。
クローゼットと鏡の前を何度も何度も往復していた。
私は家を飛び出して、せっかく整えた髪もメイクも。
気にすることなく走った。
その日は仕事がとても長く感じて。
初めてだ。
仕事が早く終わらないか、と思ったのは。
ジリリリリリ
騒がしい、退勤を告げるベルが鳴る。
私はそれと同時に、お先に失礼します、と言って走り出した。
切島が、待ってる...。そう思って。
はやく、会いたい。
そんな気持ちを胸に抱いて。
待ち合わせにしてある、時計台の下に赤髪の彼はいた。
そう言って笑う切島はやっぱりカッコよくて。
やっぱり、好きだなぁ、思う。
そう言って、切島は私の手を取って。
ゆっくりと歩いてくれた。
...まるで。
夏にいのように。
え?今までこんなことしてたっけ?
今まで、何度か切島とは出かけたけど。
こんなことをされたのは、1度もなかった。
なんだか女の子扱いされてるようで、とても嬉しかった。
2人で顔を赤くしながら着いた先は。
この辺りでは人気店の、イタリアンだった。
職場の人も何人かここオススメだって言ってたっけ。
そのお店は白を基調としたエレガンスな空間だった。
証明も白で、この中で写真撮ったら、盛れそうだな、なんて考えるくらいにはオシャレな空間。
そう言ってメニュー表を私に渡してくれた。
なんだか前とは全く違う別人のようで、すごく驚いた。だって前は、自分が決めてからしか絶対渡してくんなかったもん(笑)
私がメニュー表を返すと、それを受け取りしばらく見つめてから、店員さんを呼んでくれた。
ここも、前と違う(笑)
呼ぶのはいつも私だったのに。
そして、スムーズに注文をしてくれて。
なんだか今日の切島...紳士だ。(失礼)
夏にいみたいに、優しい...!
いや、いつも優しいけど!
いつもとは違う...優しさだ。
切島が何か言いかけた時。
タイミング悪く、店員さんが料理を運んできた。
ゆっくりと、音が鳴らないように店員さんがことり、とお皿を目の前に置く。
切島の料理も目の前に置かれた。
店員さんはぺこり、とお辞儀をして私たちから離れていった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。