第24話

*24 似たもの同士の人間
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2020/05/20 02:37
福本 愛奈
福本 愛奈
おはよー、
不知火 透
不知火 透
あ、いな。
福本 愛奈
福本 愛奈
昨日、大丈夫だった?
心配してお見舞いに行こうかと思っちゃったけど家知らないから…。ね、今度教えてよ。
不知火 透
不知火 透
いや、教えない。
福本 愛奈
福本 愛奈
えー、なんでよー。


 透と麗綺がゴミに気がついたあと、愛奈は自然に教室に入ってきた。そのまま透に媚びるように近づいていった。麗綺の存在はないように。そして昨日の悪魔の顔も思わせないくらいに。
福本 愛奈
福本 愛奈
透、なんか冷たくない?
私のこと…なんか嫌?
不知火 透
不知火 透
うるさいから。あっち行けって。


 透は愛奈にどれだけ迫られても嫌がった。前は外面を気にしてそんなことしなかったのに。透の心の中でも何かが変わり始めていたのかもしれない。
福本 愛奈
福本 愛奈
…なにこれ。
透、この机。
不知火 透
不知火 透
片づけるよ、あとで。
福本 愛奈
福本 愛奈
いや、、こんなの誰が。
……ねぇ、透が来る前に誰かいなかった?
佐野 麗綺
佐野 麗綺
っ、…。



 透の前に教室に来たのは麗綺だ。でも、ゴミなど詰めていない。詰める暇もなかったし、教室に入って一通り準備を終えた後すぐに透はやってきた。

不知火 透
不知火 透
別に、だれもいなかったけど。
福本 愛奈
福本 愛奈
えぇ、そう?
あの佐野さんは?いつからいた?
不知火 透
不知火 透
佐野は関係ないだろ。
福本 愛奈
福本 愛奈
怪しいじゃん。だって…底辺だよ?
不知火 透
不知火 透
カーストより人柄見ろよな。
俺、そういうので判断するやつ大嫌いなんだけど。


 愛奈はむくれた顔をした。それはそうだろう。透も昔、といってもまだ最近だがスクールカーストで人を判断するような性格だった。だからこそ、不審に思われる。愛奈と同じ思考を持っていたのにいつの間にか全く違うことを考えているのだから。それが誰の仕業が気になるもの。
福本 愛奈
福本 愛奈
透、変わっちゃったね。


 愛奈はそう言って透から離れた。その時、麗綺が感じた敵意のような目線はきっと気の所為ではないだろう。



 ****


 続々と人が教室に集まり、教室も騒がしくなってきた。そしてやってきたのは上のカーストを手に入れた女、成宮美華。他人の書いたミュージカルでどこまで浮かれていられるのか。よく分からない。

 朝学活始まりの5分前、一堂が教室にやってきた。
一堂 忍
一堂 忍
座れよー。


「いちどーせんせ、」
一堂 忍
一堂 忍
ん?なんだ?

「昨日のやつ、返してよ」
一堂 忍
一堂 忍
あー、ごめん。持ち主に返した。


「えー、じゃあ美華ー!」


 その女子生徒は今朝、一堂が
成宮 美華
成宮 美華
先生、返ってきてないですよぉ。借りパクするほど私の物語がよかったんですか?



 バカみたい。自分の文章でもない、盗みを働いた人間のくせにそんなことをするなんて。普通の人ならそう思うだろう。しかし麗綺は、少し違った。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
(あんなことして何が楽しいのか。人間はよく分かんない)


 人間、特に上辺カーストは自分の価値を下げぬように努力を重ねる。しかし、それは道を逸れることがある。人は常に上を求めるが、求めるものが高くなるほど危険になってしまう。今回の成宮はそのケースなのだろう。
一堂 忍
一堂 忍
成宮、あと佐野。今日の放課後に小会議室。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
…は?
成宮 美華
成宮 美華
えー、私なんかしたっけ。

「ロリコン一堂じゃね?」

「それな」
不知火 透
不知火 透
なら、、俺も行く。
福本 愛奈
福本 愛奈
と、透?なんで?
不知火 透
不知火 透
別に…気分。
 
「あいつが相当ロリコンだってとこ抑えてこいよ」
不知火 透
不知火 透
りょー、



 透の目的はただ1つ。麗綺が隠していることを知りたい。昨日から感づいていたが聞けなかったのが少し悔いだったのだ。
 一方麗綺は面倒くさいと思っていた。愛奈からのいじめも美華にパクられたことも言ってないのにそれを悟ったような顔。
 母親の交際相手がよくしていた顔だった。似ている。あいつにも、あいつにも。家に沢山来たあいつにも。

佐野 麗綺
佐野 麗綺
(なら、透も同類?)


 麗綺は透と一緒にいたら、必ずおかしなことになると考え始めてしまった。この先、何が起こるか分からない。でも透に抱いた信頼度は麗綺の中で大きく下がってしまったのだ。


一堂 忍
一堂 忍
さっきも言ったように佐野と成宮、そして不知火は放課後に小会議室。
福本 愛奈
福本 愛奈
先生、透は文化祭の反省会がありますので…。
一堂 忍
一堂 忍
不知火は自分から望んだんだ。
生徒会の先生とも話しておく。


 愛奈は不満げだった。昨日、麗綺をいじめると決めたのに邪魔が入ってくる。自分の思い通りにいかないからムシャクシャして仕方がないのだ。このままだと透を麗綺に……いやありえない。麗綺よりは…。なんてことを考えているのだ。


一堂 忍
一堂 忍
はい、以上。
文化祭で疲れているとは思うが、気を引き締めて授業を受けるように。来年の今頃は受験生なんだからな。


 一堂はそう言って朝の会を締めた。
 今日の放課後、なぜ呼び出されるのかは分かりきっているのに少し怯えている麗綺がいた。
 それはなにか悪いことが起きるような気がしていたからだ。

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