第95話

きゅうじゅうよん 嘘の里親
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2025/05/31 03:29 更新
朝の教室。
いつもと違う静けさの中で、先生はひとり言のように小さくつぶやいた。

「……ケビンもマシューも今日は看護師で休み……邪魔者はいないわ」

その声には、冷たい笑みが混じっていた。

先生は静かに立ち上がり、教室の子どもたちを見渡す。

「みんな、今日は大切なお知らせがあります」

子どもたちが顔を上げた。

「実はね、シザーちゃん……里親が見つかったの。だから今日、この孤児院を出ることになったの」

「ええええ!?」「うそでしょ!?」「そんなの急すぎるよ!」

一斉にざわめくクラス。
一部の子たちは涙ぐみ、他の子は不満そうに顔をしかめた。

だが、先生は微笑みながら言った。

「もう、里親さんは到着していてね。残念だけど……お別れ会はできないの。
それに、私も里親さんとお話しないといけないから、ちょっと席を外すわ」

そして、最後に軽く微笑んだ。

「だから、お利口さんに静かに待っているのよ?」

その言葉を残して、先生は教室を出ていった。
向かう先は──病室。



シザー視点

「コン、コン……」

ノックの音に目を向けると、先生がドアを開けて立っていた。
白衣を着たその姿は、いつもと変わらない“優しい大人”だった。

「シザーちゃん。ちょっと来てほしいの」

小さな声で「うん」とうなずき、シザーはカメラを置いて立ち上がった。
いつものように、おとなしく。
信じていた──この人だけは、裏切らないと思っていたから。

長い廊下を歩く途中、先生は何も話さなかった。
シザーも、ただその背中についていくだけだった。

やがて、とある無人の部屋の前で足を止める。

「ここで、少しだけ待っててね」

そう言って、先生が一歩後ずさったとき──

──その瞬間だった。

シザーの目に、未来が見えた。

暗い部屋の中、自分が倒れていて、口から真っ赤な血を吐いている。
誰かが近づいてくる。
白衣に身を包み、手に注射を持った“誰か”。

怖くて、声も出せなかった。

──そして、未来は現実になった。

ごぼっ、と鈍い音とともに、口の中から熱いものがこみあげた。

「え……? な、んで……?」

理解が追いつかない。
目の前がぼやけて、視界が赤くにじむ。

がちゃり。

足音。
白衣。
そして、手には──未来で見た通りの注射器。

「ごめんね、シザーちゃん。これで、少し眠れるわ」

その声は、やさしく微笑む先生のものだった。

「──っ……!」

シザーは何かを叫ぼうとしたが、体が動かない。
喉が焼けるように痛くて、声が出せない。
逃げようとした足も、ふらついた瞬間に崩れ落ちた。

そして──

すうっ……

注射針が、首筋に刺さる。

──カメラのシャッター音が、どこかで鳴ったような気がした。

世界が、ゆっくりと暗くなる。

それでも最後まで、シザーの心に残ったのは──

「先生だけは信じてたのに」という、小さな痛みだった。
これから第二章を作っていきます
第二章は前作った「地下へ地下へどんどん…」の
やり直し版みたいな感じですね。はい。オリキャラは一切出てきません。


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