第16話

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2025/12/17 06:08 更新
 昨日保健室で泣いてからは、あなたの相手の男の名前に言及されることなく一日を過ごせた。
 そのおかげで湊とのことはあまり気にせずに済んだ。空気を読んでくれたのだろう。さすが、イケメン様は違うな。

 しかし、湊のいない休み時間が暇になった。あいつがいたから毎日が充実してたのかも、なんてな。


 それにしても、昨日は失敗したなぁ。上手くごまかせたはいいものの声を上げて泣いてしまった。誰もいないとはいえ少し恥ずかしい。ちょっとミスったか。
あなた
……ん?
 ふと前方に視点を向けると、なにやら下に落ちているのを見つけた。
 近づいて見てみると、汚れが目立つ人形が床に横たわっているようだ。
 ボロボロの、お世辞にも綺麗とは言えないような代物だ。頭のフェルトが複雑に絡まっていて、撫でられてこのようになったのか、それとも強く擦り付けられたのかは分からない。
 長い前髪につかみ心地の悪いわたの量。
 手作りっぽさが残る人形は、なぜだか奇妙に思えた。
 言葉には言い表せない何かが気持ち悪い。
 ……なんて、人のものにケチつけちゃいけないよなぁ。

 腕の端をつまみ上げ、ぷらぷらと空中で揺らしてみる。
 手の動きに合わせ、されるがままに左右に揺れる人形。ボタンで作られた瞳は俺のことをじっと見つめ、さらに鳥肌が立った。
 早く持ち主のところに返さなければ。

 そう思ってみても人の持ち物なんて興味が無いもので、全く見当がつかない。
 名前とか書いてないかなー……。ま、小学生じゃあるまいし書いてることなんてそうそうないけどね。
 何かの間違いで書いてないかな、なんて腕をひねるように回す。

 クルクルと回していると、人形の背中に不自然な糸が出ている事に気がついた。
 真っ赤な赤い糸で、血の色とも思えるくらいだ。赤い糸なんて、運命の赤い糸、的な?
 乱暴に縫われているところに繋がっているから、ただのほつれだろうなぁ。
 しかしなぜか玉結びもされていないようで、まるで一瞬閉めるためだけの糸のようにも感じる。

 俺の手がその赤い糸に誘われるように近づいていき、糸の端を持った。

 なぜそうしたのかは分からない。
 きっと好奇心だ。そう、好奇心だ。別にこんくらいの糸なら俺でもすぐに戻せるし、少し取るぐらいなんでもないはず。そもそも落としたのが悪い、し。

 ゆっくりと糸が布から離れていく。
 完全に布から離れると、胴体が開いた。
 中には普通の人形より少ない量のわたが入っている。

 どのくらいの量しかわたを入れてないんだろう。
 なんとなく人形の内側に指を入れこんだ時、わたでは無いナニかが指先に触れた。
あなた
……ッは!?

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