どこ、だろう。声が掠れていて、身体にも力が入らない。
おぼつかない足取りで一面雪のように真っ白な景色を歩いていると、小さな影が見えた。
なんとなく不気味で一歩後ずさると、その影は小さく振り返った。
______ ″ やっと気がついたんだね ″
なぜか驚いた様な顔をする女の子。
聞いたことがないけど、まるで透き通った美しい水が流れる穏やかな川のような。優しくて、綺麗な声。
奇妙にも取れるセリフを吐いた後、一歩こちらに近づく女の子。
長く美しい髪が揺れ、思わず息を呑んだ。
聞き覚えはない。それなのに、なんとなく懐かしい気がして。
いわゆる “ 本能的 “ な何かなんだろうけど、それを伝えられても困るだろう。
女の子の言葉を反芻するように自分でも口に出してみる。
ピンとこないし、言葉の意味だって分からない。
それでも真っ直ぐと私を見つめる女の子は、どこか凛としていて、でもなんとなく儚い。
夢に放ったらそのまま記憶の欠片になってしまう、ような。今この子を離してはいけない気がして。
ファンタジー感満載の話だが、妙に信用できた。
淡々と説明を重ねていく。まるで前も同じ説明をしたかのように慣れた口ぶり。
会ったばかりのはずなのに信用してしまっている自分が怖くてそのことは言わなかった。
小さく目を見開いた女の子。
初めてはっきりと彼女の目を見たが、青色の目がやけに美しかった。
青色、海……やっぱり、何か見覚えがある?
女の子が指差した先には、眩い光の出口があった。
ううん、出口と言っても穴と表現するのが正しいのかもしれない。
その場に留まって、風で靡いた髪を耳にかける女の子。
____ その癖は、私と同じだった。
そう語る女の子は何を背負っているのか、この世界の全ての闇を知っているかのように重苦しい雰囲気だった。
そして、片腕を下ろし、もう片方の手は下ろした腕の肘あたりに置く仕草。
……やっぱり、どこか見覚えがある。
それは ” またいつか会えたときは私が入れない世界について教えて ” という意味合いな気がした。
この子は、私たちの世界には入れない。
その手は震えていて、恐怖に満ちていて。
思わず彼女の背中に腕を回すと、数秒経った後女の子の手も私の背中の腕に回る。
思わず抱き締めてしまったが、今はこうして抱きしめ返してくれている。嫌なわけではなかったはず。
そっと背中を撫でると、肩が小さく震えた。
私の左肩は、濡れていた。
さっき起きたときよりも、今の夢の方が鮮明に写っている…気がする。
ぼんやりとはしているものの、長い髪と青い瞳が脳裏に焼きついている。
そして、抱きしめたときの温もりも、今この手に……
そもそも起きたら謎の場所、って時点でだいぶ謎だしなあ。
不可解なことの連続で頭も疲れていたのかもしれない。
カフェ。なんだか引っかかる単語のような……
気を失った後、どうやら気を遣わせてしまったらしい。
起きたら大人数に囲まれている方が驚くだろうし、そういう面でも気遣ってくれたのかも。後でお礼、言わなくちゃな。
それにしても、カフェ……前にも行った、っけ。
みんなと隣で歩いたとき、1人…足りないような気がした。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。