第39話

# 35日目
108
2024/12/19 07:00 更新








お互い状況を飲み込みきれていないが、ひとまず梓音達が待つカフェまで向かうことになった。


その道中もなんとなく見覚えがあるような、と思いながら歩き進める。


駅から徒歩10分くらいの距離にある、桜の木の近くのカフェ。




九九 晃葉
駅前のカフェ?へぇ、そんな話初めて聞いたかも
駅の周辺の建物はだいたい知ってると思ってたんだけど…私も初めて聞いた


他愛のない会話をしながらカフェまで向かっていると、ルナちゃんが特定の誰かに話しかける様な口ぶりで声をかけた。

まるで、そこに誰かがいるような。


 
そうだ!せっかくだしあそこまで走っていこうよ、先に着いた方が奢りね?
月坂 叶蓮
何言ってんのさ、徒歩10分の距離を走っていこうとする馬鹿なんてルナくらいだからね?
 
…あ、ごめん。無意識のうちに、っていうか…
月坂 叶蓮
えぇ?無意識のうちに走ろうとするほど体力有り余ってんの?



みんなぽかん、とルナちゃんを見つめていた。

なぜかみんなと寝ていた…怖いとも捉えることのできる状況で、そんな呑気な発言をするのは彼女くらい。

ただ、言った本人も困惑している様だった。


月坂 叶蓮
ルナ?大丈夫?
 
ここで一緒に走っていたような、ひと…
月坂 叶蓮
え?


いつも明るいルナちゃんの思い詰めるような声音に叶蓮も困惑し始める。

 
…そんな人いるわけないか。ごめん、忘れて!
月坂 叶蓮
え、ああ…うん?


ちょっと意味深な会話をしている間にカフェに着いていた。

ひとまずカフェの中に入ろうかと扉に手をかけた。レトロな雰囲気で扉を開けるとぎぃ、と年季の入った音がする。

そのとき、どくんと心臓が跳ねた。

あ、れ…


なんとなく焦燥感に駆られたような。その瞬間…いや、目覚めたときから何か使命感があった。

何の変哲もない扉。今まで ″ 気のせい ” の4文字で片付けていたものから目を逸らさなくなったかのように。

九九 晃葉
なんか…やっぱり、おかしいよね?
うん。

今度は、はっきりとそう言った。

私を押すように吹き荒れた風、大きな見覚えのある桜の木、謎の夢、誰か足りない気がするこのメンツ……挙げたらキリがないほどに違和感はあった。

ただそれが何なのか、結論まで辿り着くことができない。




一度考えを整理しようとするも、脳がうまく働かない。思い出せない。


陽葵 凛乃
…もうすっかり夜になっちゃったね
え?あ、うん…そうだね


突然何を言い出すのかと思ったが、きっと凛乃ちゃんは私のことを気遣ってくれたのだ。

深刻そうな顔をする私を見て、一度頭を空にした方が良い、考えるのはそれからだ…と。

この温もり、本当に今回が初めて?




_____ 私、前にも同じような経験が…


陽葵 凛乃
ひなちゃん、大丈夫?
うん…ごめんね、心配かけちゃって
陽葵 凛乃
ううん!私もさっきひなちゃん達に散々心配かけちゃったし…
陽葵 凛乃
私ね、この景色がお気に入りなんだ。この町で見る星空。



星の輝きに照らされる凛乃ちゃんの横顔に既視感を覚える。

綺麗だが泡沫のように儚くて、幻想的な。

ゲンソウ、的?


…うん、すごく綺麗
陽葵 凛乃
あの星空、すごく綺麗でしょ?見ていると自然と笑顔になれるんだ
陽葵 凛乃
私も昔そうだったから…ひなちゃんにも分けたくて


優しく微笑む姿が誰かと重なる。

淡雪の如く儚げな姿に手を伸ばしそうになって、慌てて手を引っ込めた。


 
あの、さ


何か覚悟を決めた様子でルナちゃんがそう切り出した。

少し話しにくそうで…それでもその覚悟はとても強いものだと伝わってきた。


 
私たち、何か大事なものを忘れているんじゃないかな
 
みんなで同じ夢を見ているって時点でおかしかったんだよ
 
…非現実的だけど、みんなならきっと一緒に探してくれると思うから


何か大切なことを忘れているだなんてどこか子どもじみているのかもしれない。

けど、同じ夢を目に宿した仲間が今ここにいるんだ。

月坂 叶蓮
…当たり前じゃん。みんなで一緒に探そうよ
九九 晃葉
うん。きっと私たちにとって大切なことなんだから
もちろん。この違和感の先にみんなで一緒に行こう



ルナちゃんの決意に応えるように大きく頷いた。

もう迷いなんてない。




陽葵 凛乃
そうだね。私たちなら、きっとできるはず



夜に溶けた曖昧な星へ辿り着くまで。

その掴んだ手を離さないようにギュと強く。

この仲間達とはぐれないように。







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