お互い状況を飲み込みきれていないが、ひとまず梓音達が待つカフェまで向かうことになった。
その道中もなんとなく見覚えがあるような、と思いながら歩き進める。
駅から徒歩10分くらいの距離にある、桜の木の近くのカフェ。
他愛のない会話をしながらカフェまで向かっていると、ルナちゃんが特定の誰かに話しかける様な口ぶりで声をかけた。
まるで、そこに誰かがいるような。
みんなぽかん、とルナちゃんを見つめていた。
なぜかみんなと寝ていた…怖いとも捉えることのできる状況で、そんな呑気な発言をするのは彼女くらい。
ただ、言った本人も困惑している様だった。
いつも明るいルナちゃんの思い詰めるような声音に叶蓮も困惑し始める。
ちょっと意味深な会話をしている間にカフェに着いていた。
ひとまずカフェの中に入ろうかと扉に手をかけた。レトロな雰囲気で扉を開けるとぎぃ、と年季の入った音がする。
そのとき、どくんと心臓が跳ねた。
なんとなく焦燥感に駆られたような。その瞬間…いや、目覚めたときから何か使命感があった。
何の変哲もない扉。今まで ″ 気のせい ” の4文字で片付けていたものから目を逸らさなくなったかのように。
今度は、はっきりとそう言った。
私を押すように吹き荒れた風、大きな見覚えのある桜の木、謎の夢、誰か足りない気がするこのメンツ……挙げたらキリがないほどに違和感はあった。
ただそれが何なのか、結論まで辿り着くことができない。
一度考えを整理しようとするも、脳がうまく働かない。思い出せない。
突然何を言い出すのかと思ったが、きっと凛乃ちゃんは私のことを気遣ってくれたのだ。
深刻そうな顔をする私を見て、一度頭を空にした方が良い、考えるのはそれからだ…と。
この温もり、本当に今回が初めて?
_____ 私、前にも同じような経験が…
星の輝きに照らされる凛乃ちゃんの横顔に既視感を覚える。
綺麗だが泡沫のように儚くて、幻想的な。
ゲンソウ、的?
優しく微笑む姿が誰かと重なる。
淡雪の如く儚げな姿に手を伸ばしそうになって、慌てて手を引っ込めた。
何か覚悟を決めた様子でルナちゃんがそう切り出した。
少し話しにくそうで…それでもその覚悟はとても強いものだと伝わってきた。
何か大切なことを忘れているだなんてどこか子どもじみているのかもしれない。
けど、同じ夢を目に宿した仲間が今ここにいるんだ。
ルナちゃんの決意に応えるように大きく頷いた。
もう迷いなんてない。
夜に溶けた曖昧な星へ辿り着くまで。
その掴んだ手を離さないようにギュと強く。
この仲間達とはぐれないように。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!