第6話

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2025/12/24 08:00 更新
彼女はAFOから個性を貰っていなかった。
やれ、最高傑作いきのこりだの、やれ、魔性の女だの。
薄っぺらい言葉の羅列を聞かされた。
それらに意味はないと分かっていながら、興味を少し持っていた。
私一人じゃ心細いからか、はたまた端から信用などされていないか。
まぁ、どちらでも良い。
進捗ナシ、だな。
自分の個性を信用していないわけじゃない。
私は私の仕事をしなくては。
用済みと役立たずが捨てられることはよく知っている。
私が捨てられる側にならない為にも、先を越されるわけにはいかない。
あなた
あー!出久君!
緑谷出久
え、あ!あなたさん!?
見ればあなたさんが道端でこちらに向かって走りながら手を振っていた。
てっきりずっとあのカフェ内に居ると思っていたから、かなり驚いた。
でも初めて会った時は外に居たな。
あなた
ちゃんとヒーロー活動してるんですねぇ。
緑谷出久
そ、そりゃ一応免許も持ってますし…
あなた
あはは、揶揄っただけだよ。
見たところなんの荷物も持ってないようだが
外に用事でもあったのだろうか。
嬉しそうな顔で近寄ってきて、ふふと上品に笑うあなたさん。
まだお仕事中かと頸を傾げて聞かれたので、一応と濁して伝える。
するとあなたさんは残念そうに眉を顰めた。
あなた
出久君をお出かけに誘おうと思ったんだけどなぁ。
緑谷出久
えっ。
こんな街がボロボロになってる時に?と疑問が過ぎったが
嬉しさの気持ちが勝ってつい俯いた。
もうその疑問は頭の片隅に追いやられていた。
するとあなたさんは残念そうな顔から
恥ずかしそうに頬を染めてこちらを見上げた。
あなた
ほら、あのカフェずっと通ってられるほど面白いものないし。
緑谷出久
そ、そうですかね…?
突然の自虐。
あなたさんが歩み始めたので、それに釣られて僕も隣を歩く。
危機感知は反応していない。
この付近にダツゴクの気配も無いし、大丈夫だろう。
それに万が一の事があったら、僕があなたさんを守ればいいし。
あなた
あっちには動物園とかあるんだ。皆んな脱走してるか死んじゃってるかだけど。
そんな死体しか無いような動物園へのお出かけは遠慮したい。
内心そんなことを思っていると、あなたさんが急に片手を繋いできた。
驚いた僕は声も出ず
恥ずかしい気持ちもありつつ戸惑いながらあなたさんの方を見る。
あなた
あは、真っ赤だ。
そんな揶揄わないでほしい。
湯気が出るんじゃないかってぐらいの顔の赤み。
自分で制御出来るようなものじゃないからどうしようもない。
手を繋ぎながら僕達は再び歩き出した。
あなた
ね、出久君。二人きり、デートみたいだね。
緑谷出久
デッ…!?
きゅ、と繋ぐ力をつい強くしてしまう。
するとあなたさんが笑顔のまま僕を揶揄ってくる。
驚いてついやってしまっただけなんですよ。
決して離したくないからとかそういう事ではなく…
色んなことが頭の中にポンポンと浮かんでくるが
それを口にすると余計に揶揄われそうだ。
あなた
私ね、誰かとデートするの初めて。
緑谷出久
え、ぁ、ぼ、僕もです。
これは果たしてデートと言っていいのだろうか。
僕の思うデートとは違うなと恥ずかしながら思う。
あなたさんは道路の少し奥を見つめていて、視線が交わることはなかった。
でも相変わらず頬は仄かに赤く染まっていて。
あなた
私の作った料理を誰かに食べてもらうのも、こうやって手を繋ぐのも初めて。
するとあなたさんが繋いでいた手の力を少し強めた。
あなたさんはパッと笑顔を浮かべてこちらを見た。
つい僕は歩みを止めて、そのエメラルド色の瞳に魅入った。
あなた
出久君、今度はちゃんとしたところでデートしようね。
緑谷出久
へぁっ!?
真っ赤になりながら必死に頸を振る。
するとあなたさんは頬を膨らませて僕を見た。
と思ったら、プッと吹き出して笑い出した。
目尻に浮かんだ涙を指で拭いながら、僕を見た。
あなた
そんな必死にならなくてもいいじゃ〜ん。
酷いな〜、とまたあなたさんは僕を揶揄う。
僕だって、女性と手を繋ぐの初めてだし、デートに誘われることも初めてだし。
いや、お母さんはノーカンだよ。
顔を隠す為にボロボロになったマフラーに顔を埋める。
あなた
出久君みたいな面白い人、初めて。
ああ、もう。
この人は、一体どれだけ僕を落とせば気が済むんだ。

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