彼女はAFOから個性を貰っていなかった。
やれ、最高傑作だの、やれ、魔性の女だの。
薄っぺらい言葉の羅列を聞かされた。
それらに意味はないと分かっていながら、興味を少し持っていた。
私一人じゃ心細いからか、はたまた端から信用などされていないか。
まぁ、どちらでも良い。
自分の個性を信用していないわけじゃない。
私は私の仕事をしなくては。
用済みと役立たずが捨てられることはよく知っている。
私が捨てられる側にならない為にも、先を越されるわけにはいかない。
見ればあなたさんが道端でこちらに向かって走りながら手を振っていた。
てっきりずっとあのカフェ内に居ると思っていたから、かなり驚いた。
でも初めて会った時は外に居たな。
見たところなんの荷物も持ってないようだが
外に用事でもあったのだろうか。
嬉しそうな顔で近寄ってきて、ふふと上品に笑うあなたさん。
まだお仕事中かと頸を傾げて聞かれたので、一応と濁して伝える。
するとあなたさんは残念そうに眉を顰めた。
こんな街がボロボロになってる時に?と疑問が過ぎったが
嬉しさの気持ちが勝ってつい俯いた。
もうその疑問は頭の片隅に追いやられていた。
するとあなたさんは残念そうな顔から
恥ずかしそうに頬を染めてこちらを見上げた。
突然の自虐。
あなたさんが歩み始めたので、それに釣られて僕も隣を歩く。
危機感知は反応していない。
この付近にダツゴクの気配も無いし、大丈夫だろう。
それに万が一の事があったら、僕があなたさんを守ればいいし。
そんな死体しか無いような動物園へのお出かけは遠慮したい。
内心そんなことを思っていると、あなたさんが急に片手を繋いできた。
驚いた僕は声も出ず
恥ずかしい気持ちもありつつ戸惑いながらあなたさんの方を見る。
そんな揶揄わないでほしい。
湯気が出るんじゃないかってぐらいの顔の赤み。
自分で制御出来るようなものじゃないからどうしようもない。
手を繋ぎながら僕達は再び歩き出した。
きゅ、と繋ぐ力をつい強くしてしまう。
するとあなたさんが笑顔のまま僕を揶揄ってくる。
驚いてついやってしまっただけなんですよ。
決して離したくないからとかそういう事ではなく…
色んなことが頭の中にポンポンと浮かんでくるが
それを口にすると余計に揶揄われそうだ。
これは果たしてデートと言っていいのだろうか。
僕の思うデートとは違うなと恥ずかしながら思う。
あなたさんは道路の少し奥を見つめていて、視線が交わることはなかった。
でも相変わらず頬は仄かに赤く染まっていて。
するとあなたさんが繋いでいた手の力を少し強めた。
あなたさんはパッと笑顔を浮かべてこちらを見た。
つい僕は歩みを止めて、そのエメラルド色の瞳に魅入った。
真っ赤になりながら必死に頸を振る。
するとあなたさんは頬を膨らませて僕を見た。
と思ったら、プッと吹き出して笑い出した。
目尻に浮かんだ涙を指で拭いながら、僕を見た。
酷いな〜、とまたあなたさんは僕を揶揄う。
僕だって、女性と手を繋ぐの初めてだし、デートに誘われることも初めてだし。
いや、お母さんはノーカンだよ。
顔を隠す為にボロボロになったマフラーに顔を埋める。
ああ、もう。
この人は、一体どれだけ僕を落とせば気が済むんだ。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。