第3話

あいつ、女性苦手なんですよ
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2023/11/19 09:12
梅原さんとメールしなくなって一週間。

私はクリームでいつも通り働いていた。

「いらっしゃいませ!」
お客様がクリームにやってきた。

そのお客様は、男性であった。
女性にでも渡すのだろうか、お花を探していた。

男性は、私の所へやってきた。
「すいません。気持ちが晴れやかになる花を探してるんですけど……」
男性は私の顔を見て言った。

「もしかして、梅原翔生に告白した人ですか?」

私は男性を見た。私の知らない人だ。

「はい?何故あなたがそんなこと知ってるんですか」

男性は、失礼しましたと言い、
「私は、翔生と一緒に働いているRocoデザイン会社の犬飼陽介(いぬかいようすけ)です。」

Rocoデザイン会社。
あ、梅原さんが働いている会社だ。
と私が思っていたところ……
犬飼さんは、ニコニコと私を見てきた。

「私は、花守真白です」
犬飼さんは、存じていますと言い、ニコニコしながらまた私を見てきた。

「犬飼さん。もしかして、梅原さんの同僚の方ですか?」
私は犬飼さんという人に恐る恐る聞いた。

「はい。会社から一緒になったんですけど、あいつには色々と世話になってますよ」

犬飼さんは、頭をポリポリとかきながら
下にうつ向き言った。

「あの翔生の奴、何か言ってました?」

「いや、何も言ってません。梅原さんとは、メール一週間してませんし、連絡しても連絡がないので……」

犬飼さんは、あ、そういえばあいつあの用件で忙しいそうだったもんなと呟いていた。

「そうですか。では、あなたに話さなくてはなりませんね。何故俺がここに来たのかを」

犬飼さんは、店に誰もいないことを確認して私に言った。

「一時間だけ時間もらえますか?」

「いいですけど……ちょっと待ってください」
私は犬飼さんに言い、立ち去ろうとしたら、犬飼さんが声をかけてきた。

「その前にあの……妻に花を買いたいんですけどオススメありますか?」

犬飼さんは照れた様子で私に言ってきた。
妻ということは、結婚しているのか。
やはり、イケメンは優しいなと関心しつつ、私は花を選びに行った。

「分かりました、ちょっと待って下さいね」

私は、犬飼さんにバラを勧めた。

何故バラかというと愛しているという意味がある。

その愛をまた確かめられたらと思って
バラにした。


犬飼さんは、照れていたが嬉しそうに
買ってくれた。

犬飼さんが訪問してきたのは、昼前だった。

店長の家は店と一緒になっているので家で食べていたが、店長にお昼は外で食べると了承を得て、外食をすることになった。

店長は、もうあなたの分も作ったのにという顔をされた。

店長には申し訳ないなと思いながら、私は外をでた。


バラを買って外に出ていた犬飼さんは、私が店長の話をつけている間、犬飼さんは、店のそばにあるベンチに座っていた。

「お待たせしました」
私達は小さい鞄を持って、アスファルトを歩き始めた。


「すいません、お待たせして……」
私は犬飼さんに言った。

「いや大丈夫ですよ。さっき程のベンチで待っているの楽しかったですから」
私は、犬飼さんの発言がよく理解出来なかった。

「あ、そうでしたか、犬飼さんはどこでお昼を食べようと思ってたんですか?」

犬飼さんは、周りを見渡して店を選んでいた。

「いや、あまり私食べ物には詳しくないので……花守さん選んでくれますか?」

犬飼さんは、笑顔で、私に言ってきた。

「…いいですよ。それなら、私のお勧めな所あるんですけどそこでいいならそこでいいですか?」

「はい、そこでお願いします」
犬飼さんは私を見て笑顔で返事をしてくれた。

私は、お勧めな所まで犬飼さんを連れていた。

私のお勧めな所とは、喫茶店「星」だ。
人気とはいえないが、小さい喫茶店をやっていて、イタリアンが凄く美味しいのでここをお勧めした。

犬飼さんに、気に入ってくれるかは分からないけど。

私は犬飼さんを喫茶店「星」に連れて行った。


カランカランと扉の音がする中、私達は喫茶店「星」に入っていた。

「オーナー、お疲れ様です」

私はこの喫茶店「星」でやってるオーナーとは仲が良い。

初めて来た時は、一見怖いオーナーだったが話をしてると面白い人だ。

ゲーム好きという話で私とオーナーは仲がよくなったのだ。

「お、真白ちゃん。連れは彼氏かい?やっと真白ちゃんも彼氏が出来たとはおじさん泣けるよ」

オーナーは、ポケットからハンカチを取り出し目に涙を浮かべていた。

「ち、違うって、オーナー。こちらは犬飼さんという人で今日私に話があるから今日ここに来たの!」

オーナーは、なるほどといった様子でテーブルに手を叩いていた。

「そうかい、そうかい、分かった。じゃあ、そこ座りな」

「オーナー、有難う」

年に似合わずウィンクをして私に了解と手でOKポーズを出していた。

私も手で了解とOKポーズを出した。

犬飼さんは、椅子に座り私に言った。
「さっきは、ありがとうございます。花、妻喜びますよ」

「それは、良かったです」
私はそう言うと犬飼さんは、周りを見渡して珍しそうに店を見ていた。

「この店、珍しいですか?」
私は犬飼さんに聞いた。

「いや、そういうことじゃなくて。お客さん、昼時なのに少ないなと思って」

「この店はあまりお客が来ないんですよ。だから、常連客しか来ないんです」

犬飼さんは、へぇーと納得したようなご様子で頬杖をついていた。

その時、オーナーが水とメニューを運んできた。

「なに食べますか?」

私は、犬飼さんに聞いた。

「それでは、オムライスで」

「じゃあ、私もオムライスで。オーナー、オムライス二つお願いね」

オーナーは、ラジオを聞きながら、返事を返した。

「それで、犬飼さんがお話したいことはなんですか?」
私は水を一口、口に含みながら言った。

「そうです。私が話したいのは、翔生についてです。あいつ花守さんに話してないことあると思うですよ」

「いや梅原さんとは、直接話をしたのは一回しかないんです。後はメールだけでの連絡をしていただけですよ」

犬飼さんは、ため息をついた。

「分かってます。でも、その一回があいつには大事だったんですよ。今日何故私がここに来たかというと、あいつに花守さんが勤めている花屋さんに行って、家族に花買ったらどうだと提案されたんですよ。いつも心配しないんですよ、私の家族のことは。だから何か怪しいなと思って、私は全部事情を聞きました。そしたら、あいつ女性が苦手なんですよ。
事情はよく分かりませんが、その事だけは花守さんには伝えようと思って、今日来ました」


「……何故犬飼さんがわざわざここまで?」

犬飼さんは水を飲んでから私に言った。

「私も分かりません。でも、あいつには幸せになってほしいんですよ」

犬飼さんは何故か悲しそうに外を眺めてから私に言った。

「だから、花守さん。あいつとまた会って頂けますか?」

犬飼さんは、優しい目で私を見て言ってきた。

犬飼さんの目を見て、何故かこの人はまだ何かを私に隠してると思えた。

「はい、是非会いたいと思っています」

犬飼さんは、よかったと肩の荷が降りたのか背伸びをした。

「あ、すいません」

「そんなに梅原さんが心配なんですね」

私が犬飼さんに質問した時に、オーナーがお待ちと言い、オムライスが運ばれてきた。

「さあ、頂きますか」
私と犬飼さんは、オムライスを食べながら、さっきの続きを話し始めた。

「翔生が心配っていうより大丈夫かって言いたいかな」

私は犬飼さんにそのことについて突っ込もうと思ったが、聞きにくかった。

私達は、梅原さんの話をした後、Rocoデザイン会社の話、梅原さんがどういう仕事をしているのかを教えてくれた。

その時に、私は衝撃を受けた。

「犬飼さん聞いてもいいですか?……梅原さんって何歳ですか?」

犬飼さんはオムライスを食べた終わり、残っていた水を飲んでいた。

「……24歳だよ」

「えー、24歳!え、えーそうですか」
私はそのことに衝撃を受けつつも、そのことを飲み込むように慌てて水を飲んだ。

「女性に歳を聞くのは失礼ですけど花守さんは、いくつですか?」

「……30です」

「30歳、いいですね。私の奥さんと同じ歳です」
犬飼さんは、嬉しそうに言ってきた。

「……そうなんですか!」

「だから、心配しなくて大丈夫ですよ。
私達も6歳の年の差があるけどそんなに心配しなくてもやっていけますから……だから、頑張って下さい」

私達はその話をした後、オーナーに会計を済ませようとしたが、犬飼さんが私に話かけてきた。

「……ここは私が出しますよ。私が無理やり押しかけてきたんで……」
犬飼さんは、申し訳なさそうに言った。

「い、いえ。私が出しますから。私がこの喫茶店に連れてきたんですから」
犬飼さんと私は財布をだしながらいいえと言い合っていった。

オーナーは、はあー、いい大人がなにしてんだか、もう割り勘でいいんじゃないと言っていた。

私達は、目を合わせてオーナーを見て笑った。

「……じゃあ、割り勘にしますか」
犬飼さんは、私に言った。


「……そうですね」
私は急に恥ずかしくなって、下を見た。
私達は、オーナーにご馳走様でしたと言い、外に出た。

「じゃあ、こっちなんで失礼しますね」
犬飼さんは、反対方向の道を指をさして言った。

「あの……なんであなたは梅原さんのことそんなに教えてくれるんですか」

犬飼さんは微笑み浮かべて、私に言った。

「きっと花守さんにも分かるときがきますよ、ではこれで」

私は、その言葉の意味が、全く分からなかった。

でも、いずれ知ることになる。

梅原さんが本当に抱えている闇を……

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