第48話

Ep.36 Prosthetic Eye
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2024/03/26 09:00 更新
引越してから3日。
初めのうちこそ片目しか見えない弊害で距離感がつかめず、度々壁やら家具やらにぶつかっていたものの、だんだん慣れてきた。
生活環境が変わっても、体調を崩すこともなかったので、今日は少し遠出することになった。
名古屋まで車で1時間。
義眼院までお出かけだ。
いよいよ義眼を作ってもらえる。



瞳の大きさや色は当然人によって違う。
そこで、眼科医の診察結果をもとに1つ1つ手づくりで義眼を作っていく。
それが義眼師さんの仕事だ。
だが、義眼の表面は滑らかな状態に磨きあげないと、まぶたの裏に触れたときに摩擦が起き、炎症の原因になってしまう。
人が着けられる義眼を作ることができるようになるまでは、何年もかかるらしい。
簡単な仕事では無いのだ。


義眼師さん
さて、色は右目に合わせれば宜しいですかね?
目の形やサイズを細かく測られ、最後の質問。
荼毘
荼毘
ああ。…………それで、構わないな?
(なまえ)
あなた
あ……
荼毘さんに頷こうとして、何かが私を踏みとどまらせた。
義眼師さん
大丈夫、必ず右目と同じ素敵な薄紅色のものを作るよ。
違う、そうではなくて………私が、本当に欲しいのは……
息が詰まって声を上手く出せない。
喉がカラカラに乾くのを感じた。
自分の望みを思うまま口にするのは、なんだか怖かった。
なかなか口を開かない私に義眼師さんが少し困ったように微笑みかける。
義眼師さん
それとも他になにかご希望の色でもあったかな?
(なまえ)
あなた
…色……えっと…

荼毘
少しくらい何か強請ってみろよ。
荼毘
欲しいものの一つや二つあるだろ。何も気にしなくて良いから、自分の気持ちははっきり言え。

不意に買い物に行ったときの荼毘さんの言葉が蘇った。



(なまえ)
あなた
色………お願いしたい色が、あります。
初めて自分からお願い事をした私に、荼毘さんが目を見張った。
その吸い込まれるような碧い瞳に目を奪われるのは、果たして何度目だろう。

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