──ポタ、ポタ、ポタ。
いつもの点滴の音に混じって、
今日は心臓までうるさい。
リオヒョンが病室のカーテンを勢いよく開けて、
ひょこっと顔をのぞかせる。
ケラケラ笑いながら、
ベッドのリモコンを操作して背中を起こしてくれる。
廊下に出ると、人の気配は少ない。
静かすぎて、自分の心臓の音が響きそう。
そう言って、
背中に、彼の胸がふわっと触れた。
すぐ耳元で響くリオヒョンの声に反応して、
耳が熱くなる。
後ろからぴたりと寄り添うように支えてくる。
手首をそっと撫でるように支える指先。
なんだこれ。
反則だろ。
歩き終わった後、心臓がバクバクして、
俺は床にしゃがみ込んだ。
そう言いながら、笑う目は優しい。
―――そして、やはり、気になることがある。
リオヒョンの顔色が、少しずつ悪くなっている。
頬がどんどん痩ける。
笑っていても、息が浅い。
むきになって笑わせようとしてくるのが、
逆に不安になる。
ある日。
ふっと彼が来ない日があった。
毎日顔を出してくれていたのに。
看護師さんに聞いてみても、
「都合がつかないんですって」とだけ。
一人で寝る夜は、いつもより長かった。
何度も何度も、色んな夢を見た気がする。
川沿いの道で、アイスを食べる。
真っ暗な丘で、星を眺める。
おぼろげな断片にはいつも、
リオヒョンらしき青年の姿があった。
翌日、涼しい顔で現れる彼。
リオヒョンは白い箱を大事そうに抱えて、
愛しそうに笑う。
一口食べる。美味しいけど、少し苦い。
隣でミルクプリンを食べているリオヒョンを見て、
俺は良いことを思い付いた。
目を丸くして俺を見つめるヒョンを横目に、
ヒョンのミルクプリンもすくって口に入れた。
コーヒーの苦味とミルクの甘みが
程よく溶け合って、、、
―――懐かしい。
このプリンも、混ぜるのも、初めてのはずなのに。
知っている味がした。
笑ってる。
……けど、腕に注射の跡みたいな赤い点。
見逃さない。
目を逸らす。
嘘の付き方が、下手くそすぎるんだ、この人は。
何か隠してる。
絶対に。
ベッドに戻って、静かな夜。
横の椅子に座って、俺の手を握ったまま、
眠気と戦ってる横顔。
胸のドキドキを手で押さえて、口を開く。
言い終わる前に、彼の手が離れた。
胸に電流が落ちたような痛みがした。
言いながら、彼の瞳がまた一瞬、泣きそうに揺れた。
苦しそうに笑って、顔をそむけた。
その横顔が……
あの、夢の涙と重なる。
点滴のしずくと心臓の音が、同じリズムで鳴っている。
口には、まだあのコーヒーとミルクを混ぜたプリンの
完璧な味わいが残っている。
きっと、これは―――
一度落ちた恋の、
続きだ。
彼にどんな理由があろうとも、
俺はリオヒョンのことが、好きだ。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!