第3話

恋に落ちる、音がする
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2025/11/03 11:00 更新
──ポタ、ポタ、ポタ。
いつもの点滴の音に混じって、
今日は心臓までうるさい。


Leo
サンウォナ、廊下の散歩行くぞー

リオヒョンが病室のカーテンを勢いよく開けて、
ひょこっと顔をのぞかせる。

Sangwon
……まだ、眠いです。
Leo
だめだめ。歩かないと。
骨折は寝てても治るけど、
筋肉はすぐ落ちるんだから。

ケラケラ笑いながら、
ベッドのリモコンを操作して背中を起こしてくれる。


Sangwon
(優しすぎるんだよ、リオヒョン。)


廊下に出ると、人の気配は少ない。

静かすぎて、自分の心臓の音が響きそう。



Leo
手すり持って、ゆっくりおいで。
Sangwon
……こわ。
Leo
大丈夫。後ろから支えてる。


そう言って、

背中に、彼の胸がふわっと触れた。


Leo
サンウォナ、力入りすぎ。肩ガチガチ。
Sangwon
ち、近い……!
Leo
ん?落ちたら危ないだろ。


すぐ耳元で響くリオヒョンの声に反応して、
耳が熱くなる。


Leo
顔、真っ赤。
Sangwon
うるさい……!


後ろからぴたりと寄り添うように支えてくる。

手首をそっと撫でるように支える指先。

なんだこれ。
反則だろ。



歩き終わった後、心臓がバクバクして、
俺は床にしゃがみ込んだ。


Leo
サンウォナ、疲れた?
Sangwon
……心臓が疲れた。
Leo
なんだそれ。

そう言いながら、笑う目は優しい。




―――そして、やはり、気になることがある。

リオヒョンの顔色が、少しずつ悪くなっている。

頬がどんどん痩ける。
笑っていても、息が浅い。



Sangwon
……ヒョン、やっぱり具合悪い?
Leo
そんなことないよ。
Sangwon
じゃあ、熱測らせて。
Leo
やだ。
Sangwon
.....こんな時だけ、子供っぽいんだから。
Leo
お前ほどじゃねぇよ。


むきになって笑わせようとしてくるのが、
逆に不安になる。




ある日。

ふっと彼が来ない日があった。

Sangwon
(……今日、来ないんだ。)


毎日顔を出してくれていたのに。

看護師さんに聞いてみても、
「都合がつかないんですって」とだけ。



一人で寝る夜は、いつもより長かった。


何度も何度も、色んな夢を見た気がする。

川沿いの道で、アイスを食べる。
真っ暗な丘で、星を眺める。

おぼろげな断片にはいつも、
リオヒョンらしき青年の姿があった。





翌日、涼しい顔で現れる彼。

Leo
お疲れー。今日は有名な
お店のプリン、買ってきたぞ。


リオヒョンは白い箱を大事そうに抱えて、
愛しそうに笑う。


Leo
ミルクプリンとコーヒープリン、
どっちがいい?
Sangwon
......コーヒープリン。
Leo
だと思った。


一口食べる。美味しいけど、少し苦い。

隣でミルクプリンを食べているリオヒョンを見て、
俺は良いことを思い付いた。


Sangwon
ねえ、それとこれ、一緒に食べたら
もっと美味しいんじゃない?
目を丸くして俺を見つめるヒョンを横目に、
ヒョンのミルクプリンもすくって口に入れた。



コーヒーの苦味とミルクの甘みが
程よく溶け合って、、、
―――懐かしい。

このプリンも、混ぜるのも、初めてのはずなのに。

知っている味がした。




Sangwon
ねえ、昨日、どこ行ってたの。
Leo
えっとね、プリン買いに行ったら、
迷子になっちゃってさまよってた〜ㅎㅎㅎ
Sangwon
ふざけないで?
Leo
冗談だよ。ちょっと用事があってさ。


笑ってる。

……けど、腕に注射の跡みたいな赤い点。
見逃さない。


Sangwon
ヒョン、その……腕。
Leo
ああ、これ?蚊。でけぇ蚊だった。
Sangwon
11月だよ今。
Leo
そうだった。


目を逸らす。

嘘の付き方が、下手くそすぎるんだ、この人は。
何か隠してる。
絶対に。




ベッドに戻って、静かな夜。


Sangwon
ヒョン。
横の椅子に座って、俺の手を握ったまま、
眠気と戦ってる横顔。
Leo
ん?


胸のドキドキを手で押さえて、口を開く。

Sangwon
あのね、俺、ヒョンのことが―――


言い終わる前に、彼の手が離れた。


Leo
.....そうだ、サンウォナ。
Sangwon
......なんですか?
Leo
退院したら、もうお前とは会わないから。

胸に電流が落ちたような痛みがした。


Leo
俺ら、ただの"友達"だろ?
俺にも、生活があるるんだよ。


言いながら、彼の瞳がまた一瞬、泣きそうに揺れた。


Sangwon
でも俺、まだ大事なことが、
思い出せてない気がして......
Leo
なら、そんなに重要なことじゃ
ないんじゃねえの?


苦しそうに笑って、顔をそむけた。


その横顔が……
あの、夢の涙と重なる。


Leo
.....忘れたままで、いてくれよ。



点滴のしずくと心臓の音が、同じリズムで鳴っている。

口には、まだあのコーヒーとミルクを混ぜたプリンの
完璧な味わいが残っている。


きっと、これは―――

一度落ちた恋の、
続きだ。




彼にどんな理由があろうとも、

俺はリオヒョンのことが、好きだ。

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