翌朝、登暮は何度も鳴る目覚ましの音で起きた。頭がぼんやりしている中、昨夜のことを思い出した。そうだ、女性を家に泊めたんだった。ギシギシなる身体を叩いて起こし、ゆっくりと立ち上がる。そして寝癖のある髪をガシガシと掻きながらリビングを覗くと、ソファで毛布にくるまって眠っている灯花の姿があった。登暮は静かにキッチンに向かい、簡単な朝食を準備する。かと言って、あるのは賞味期限切れかけのパンとジャムだ。お情け程度に目玉焼きを作りパンの上に乗っけた。
机の上に朝食をどうぞとメモを書き残した後、登暮は着替えを済ませ、出勤の準備を始めた。その時、ソファでモゾモゾと動き、目覚める灯花の姿があった。彼女はしばらくボーッとしていると慌てた様子で周りを見渡した。登暮と目が合い、口を開いた彼女を黙らせるように、登暮が言う。
「おはようございます。オートロックですので、出るときは勝手に出てください。それではお元気で」
登暮は振り返った。
「盗まないでくださいね。」
灯花は苦笑いを浮かべた。
「盗みませんよー」
登暮は会社に向かった。一日中、家に置いてきた灯花のことが頭から離れなかった。金目のものはあまりないとはいえ、見知らぬ女性を家に置いて行くなんて、我ながら軽率だったかもしれない。
仕事は相変わらず過酷だった。理不尽な上司、終わらない残業、休む間もない忙しさ。登暮は疲れ切って家路についた。奇跡的に終電に間に合い、二日連続で家に帰れることに感動する。マンションに近づくと、自分の部屋の電気がついているのが見えた。
「あー、、電気消せって言うの忘れたー、、」
登暮は頭をかいた。電気代がもったいない。玄関の鍵を開けて中に入ると、キッチンから音が聞こえてきた。
料理をしている音だった。
「おい嘘だろ…」
登暮は恐る恐るキッチンを覗いた。そこには、エプロンを着けた灯花が、慣れない様子で料理をしている姿があった。
「あー!お帰りなさい!」
灯花は慌てたように振り返った。
「なんでいるの…?なんで料理してる…?!」
登暮は混乱していた。
「いやっ、だってぇ…そのぉ…」
灯花は人差し指をつんつんしながら、焦った様子で言った。
「あはは〜…ダメでしたか?えへ、」
登暮は呆れた。しかし、家に帰って明かりがついていて、手料理の香りがするというのは、あまり悪い気分ではなかったと振り返って思う。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。