どうして……

貴方…この店側の人間ですよね？

…そうです、俺はこの店の人間です

なのに……どうして

俺は…貴方と同じなんです

俺と、同じ？

俺は……ここで、息子を1人亡くしました

亡くした……？

もう数年前の話です

俺は何千万もの借金を抱えていました。
借りたのは正にここの店の主人に。

返済が出来ずにいる俺に、店主は1つ提案をしてきました。

____もう金はいい、だから息子を譲れ。と

初めは戸惑いました。
だけど、俺は当時、頭がどうかしていたんです。

俺は……店主に従ってしまいました。

そして、1つ条件を付けて息子を譲りました

__俺を、息子の傍に置いて働かせてくれ。

そして、与えられたのはこの監視役です。

毎日、息子は客の思うままに使われました。
夜に帰ってきた息子の姿を見れば、やっぱり父親として我慢できないものが込み上げてきました。

そして、店主に息子を返してくれと、そう頼みました。でも、その願いは叶いませんでした。店主は返済額の倍の値段が払えるのなら良いと言ってきたんです

俺は……息子を捨てたんです

牢の中から縋るあの顔やあの言葉は今でも忘れません。

「ここから出してくれ。もう辛い。父さん、早く助けて」

俺は……そんな息子に

「もう不可能だ。抵抗はやめろ。辛いだけだ」

そう言ってやることしか出来ませんでした

息子が売られ始めてから1年が経とうとしていたある日、客室から連絡が届きました。

___息子が動かなくなったと。

息子はその時亡くなりました。
強姦をされながら、恐怖の中で、誰にも助けを求めることも出来ずに1人で死んでいったんです。

あまりのショックからこの場を離れようとしましたが、店主が許してくれませんでした。
それから……今まで、こうして監視として働いています。

息子を亡くしてから、俺は感情と言うものを失っていました。苦しんでいる者を見ても何も思わない。ここへ来たら終わり。皆このまま死んでいく。息子のように。

そんな時、出会ってしまったんです。

あなたの息子、キムテヒョンくんに。

まるで息子を見ているようでした。

ここがどんな場所で、どんな苦しみを味わっていくのか知らず、ただ、希望だけを夢見て、「たすけて、ここから出してくれ。幸せになりたい」

彼の目は宝石のような綺麗な目をしていました。

最初は分からせてあげないといけないと思ったんです。「ここに来たら終わり。辛い思いをするだけだ。抵抗をやめろ」彼にはそう言いました。

いつからか、彼は諦めた様子で、人が変わったように変化していきました。

客も増え、更には待遇制度だなんて、身体が持つはずがない。もう彼はここで終わるんだ。そう思いました

でも集中治療室にいる彼を見た瞬間、このままではいけない。そう思ったんです。彼を、死なせてはいけない。生まれ変わった息子のような彼を、死なせてはいけないと、そう思ったんです。

息子からの教えのように感じて。
「これ以上、同じ事を繰り返さないで。」そう言われているように感じたんです。これは、息子への償いだと思ってます。

自分事で申し訳ないと思ってます。でも、俺はテヒョンくんを死なせなくない。それは貴方も同じですよね？、

……テヒョンは幸せ者です。

監視さんからも、ジミンくんからも求められて。ジョングクさんやナムジュンさんにも手を貸してもらえるテヒョンは、幸せ者なんです。

でも、これから本当の幸せを与えてあげるんです。

今まであげられなかった分、全てを。

俺、以前テヒョンくんに言われたんです。
どうしてそんなに優しいの？って。
俺は、こんなのは優しさじゃない。と突き放したけど……

本当の優しさを教えてあげたいんです。
こんな俺じゃ、無理だと思いますけど、、

そんなこと……ありません

色んな経験をした貴方じゃないと教えられない「優しさ」があると思います

……っ、

力を……貸してください

テヒョンを助けるために。

もちろんです。今度は妥協しません。
死ねと言われれば、潔く死にます。

俺にはそのくらいの覚悟があるんです。

____もう、失うものは何もありません。