「 愛せるか否かを語尾に頂戴 」
「 Muse Muse 無罪放免 」
「 何度でも云うさ 」
“ 君が救い ”
アクシア・セフィランはそう言って開口一番哲学を投げつけた。いつもの事である。
木製の時計の針は2時過ぎを指している。日差しに照らされる喫茶店「Supica」の看板は柔い風で揺れ、明るいし、と店内には電気すらついておらず、窓際から刺す日差しだけがその空間を支配している。店内には誰もいない。もう一人の欠かせない、三人目の同居人も今は珍しく外出中だ。
そしてそれを受けた狐火端カナはというと、その情熱にはまったくの興味も迎合する気も無いという様に、目と鼻の先と言っていいくらいすぐ前にいるキッチン側のアクシアに目の一つもくれないまま、カウンターに座って_____どこから引っ張り出したんだかわからない漫画を読んでいた。
表紙は色褪せ、ページは無造作な方向に膨らんで分厚くなり、古びた紙の跡が目立つ。だいぶ昔のものを物置から引っ張り出して来たんだろう。変わらず一線級なのは中身の面白さだけと言ったところだろうか。
一応相槌だけ打っているがそれ以上の会話を進めようとしている風には見せない。彼は本当に没頭しているか無視している時は返事の一つすら返ってこないので、とりあえず今回のレベルならと一つ謝罪だけ置くように柔く投げておく。
_____どうやら今回は良い所だったから一回スルーしてただけみたいだった様だ。
そこで初めてカナは漫画を閉じて顔を上げる。付箋を貼ったり机にそのまま突っ伏させるほどではなかったのか、はたまた次もう一度開いた時にどこまで読んだかと探すその手間すら厭わないくらいに気に入ったのだろうか。
姿勢を改めて座り直して、腕を組んで考える。視界は宙の方を向いていた
「何だよ急に」だとか、そんな事は今更言わない。何故なら日常茶飯事も茶飯事だから。そしてもうそんなやり取りに、導入に、とっくのとうに慣れているから。
記憶を手繰り寄せるにしても大分大雑把で抽象的なぼやきだった。しかしアクシアはそんな身振り手振りだけでカナの言いたかった内容を理解して、笑う。
喉まで出ていたものがするっと出た様にやわくパチンと手を叩く。高性能AI並みの圧倒的な推測技術もまた、二人の中では日常的なほどに慣れたものである。
口はもう半開きになっていた。話を振られて初めて、改めてきゅ、と引き結ぶ。
そこまで放置されていた漫画が再び手に取られる。
大幅な形を保つ本は存外片手でひらひらと揺らされていた。
成程確かに、古めかしいものだ。10年前、20年前か、現在の書店を探したって所謂古品コーナーにあればラッキーな程度の。
アクシアはそう笑って返す。
きっとこれから彼の買っておくものリストには、食材や日用品に加えて漫画第一部まとめ買いセットが追加されるのだろう。この二人ってそんなものだ。
アクシア・セフィランはとんでもない知識欲大魔神である。そして無論それに則り本の虫。
腕に顔を埋めた状態で見上げれば、アクシアは踏み台を使っている訳だからちょうど目線は同じくらいになる。余裕に満ちた楽しそうで悦楽に満ちた双眸を何かを暴くような琥珀色が見つめた。
めんどくせー、と伸びをするその顔は、面倒と言いつつも不思議と楽しそうなものだった。
言ってしまえばこれもまた日常茶飯事である。うざったい、本当によくやるな、と言いながらも。
そんな彼の享楽にカナもまた存外振り回される側である。でもそれを心から否定はしないのだ。
そしてまた至極日常的な会話を交わす。次の土曜はさぞや楽しいものになりそうだ。
カウンターに両手をついて笑って、そしてまた拭き掛けだった食器に手を伸ばす。
やっぱりキミは面白いね、とでも言うようににその顔が笑うから、
アクシア・セフィランは_____非常に端正な姿に紳士的な振る舞いをする、いってしまえば非常にイケメンな男だ。それは間違いない。だがしかし。
一枚暖簾を押してみれば結構凄い一面もあるのだ。にこにこと一切表情を変えないまま、首を少し傾けて、そんな言葉を吐いてしまえるくらいには。
だからある意味彼の相手をするって相応の胆力と精神が必要なのかもしれない。もっとも、そこまで言った割に今正に慣れた様子で相手をしている狐火端カナという男はそこまで胆力と精神力を主に生きている訳でも無い、むしろ真逆と言ってしまってもいいくらいにはゆらゆらと芯を見せずに揺れるような人間性の持ち主(※狐と海月のハーフ)なのだが____逆を返せばこれは「慣れ」ゆえにである。理屈では無い、けれどもうとっくの疾うに慣れてしまった、そんなコミュニケーション。
こうやって笑い飛ばせるくらいが、きっと丁度良い。
当然の如く笑い、当然の如く神格化される。そしてそれはきっとあながち比喩でも、そしてあまつさえ冗談でもないのだろう。だってそのくらいその目は本物だ。
それは、つとめて軽く鼻で笑い飛ばすような
その言葉は、一言一句は、言って仕舞えばまるで空気を読んでいなかった。
切り取れば「悲劇」という題名で飾れるような絶望。死体と血の山。むせかえる悪臭。
誰ひとり情景を鮮明に語れなんて言っていないのに
すらすらと綺麗な声から紡がれる言葉はあまりに不似合いで
そうしてにっこりとまた笑う。燻んだ青色の傘が、雨を反射して無作為な音を立てる。
自分にとっては、馴染みのない横文字だ。
だからこうやって名前を教えたのも一種の酔狂だ。
誰かに名前を教えたのなんていつぶりのことだっけ。否、もう全てがどうでも良いし、もし教えた所で何かに悪用されそうになったなら殺してやれば良いだけの__________
…なんだこいつ?
それは仮面を被った嘲りではなく、静かに、変わらないトーンで、でも確かに嘘偽りのないような言葉だった。けれど、やっぱり吐かれる言葉は意味を理解した瞬間に現実との乖離と矛盾で笑ってしまう。
液体まみれ、血まみれ、穢れに塗れた獣
それが雅だなんて。美しいだなんて。お世辞だってもう少し上手くやるだろう。
もしかしてこいつ、仮面とそれらしい言葉を吐くのがべらぼうに上手いだけで、やっぱり全部嘘なのか?
そんな猜疑心が確かに一つ、芽生えて_________
…こいつは
常に予想外の言動をしてこないと気が済まないのだろうか
あ、妖精なんだ。確かに子供みたいな見た目してると思った。
そこでたった一つ、どうでもいいほど小さく、心が動いた_________
前言撤回。
本当になんなんだコイツ。
そいつは常に笑っていたけれど、胡散臭いようには見えなかった。
けれども、代わりに生合成が取れなくて、
こんなきちんとした、良家育ちですと言わずとも伝わるような形をしているのに、立っているのは死骸と性の残骸が転がる雨の突き刺す墓場だし
それなりに、けれど確かにかけがえもなく幸福ですと言うような笑顔なのに、こいつが今話しかけて、一緒に住もうだとか提案しているのは、その墓場に横たわる薄汚れた獣だ
何をそう、
きっぱりと。
一瞬時間が止まったようだった。時を刻むのは絶え間ない雨音だけだ。
素直すぎて、あけすけすぎて、見た目に反してぶっ飛び過ぎていて、いっそのこと「なんだこいつ」すぎて面白がるように、
口角は上がってきた。もっとも、純度百パーセントの綺麗な笑顔では全くないけれど。
ただ少し
食えない奴だな、って思ったから、際どい事情を聞いて、嫌がらせとはまた違う、ちょっかいをかけようとした
ただそれだけだ
それだけ 、 なのに 、
他人事のようにすらすらと言葉が出てくる。本来それは、語れば語るほど涙が溢れてくるような、そんなものの筈で、筈なのに
一挙手一投足目を奪われるような素振りで、端正な笑顔で、一部の隙も無いような振る舞いと笑顔で、なんて度し難いことを話しているんだろう
本来ならばそれは善とも悪とも、仕方なかった、とも言われるような行為で、でも
それを嘲るでもなく、自重するでもなく、ただただ「笑いながら」墓場に転がっていた赤の他人に話す奴なんて、見た事がない
こんなに博識で聡明そうな男が
逃亡だなんて、地に足のついた惨めで無様な行為の末ここに立っている、だなんて________
嘲りとはまた違う
けど、確かに、
興 味 が 湧 い た
礼儀なんて端から教わっていないから、敬いなんてする気もないから、半笑いのままはっきりと、ゆらりと、人差し指で指す
じっくりと食むような目線だ
不思議と蕩かされるような気分になる
やっぱり笑っている。無理して笑っているでも、侮辱されて怒りを隠しつつ笑顔を浮かべているわけでもない、変わらない笑顔だ
けれど、何故だか不思議と
出会った瞬間より、心が一つ、近づいた気がした
罪を贖おうとする意志もないような人でなし、という訳でも、
悟りを開いた賢者だとか、そういう風にもとても見えない
けれども、確かに皿の上を賞味するような、自分が16年間積み重ねて背負ってきた「最悪」すら、掠めとるように利用して来るこの感じ。
それが割と、なんだこいつ?って感じに順当に不快で、そして
なんだこいつ…って、不思議と、
好奇心が湧くような存在でもあって、
ああ、本当、笑いがとまらない。二人でずっと笑っている。もう全部馬鹿馬鹿しくなってきた。
嘆くような言葉とは裏腹に、
それはどこか吹っ切れたような、嬉しそうな笑顔で。
何を警戒しているんだろう、こんなに、
こんなに、愉快で、食えなくて、面白い奴なのに
こいつはきっと、綺麗じゃないし、完璧じゃない
綺麗な宝石の皮を被った、醜く蠢く煮凝りのような何かで_________
___________話してて、どうしようもなく、愉しい。
綺麗な世界なんて自分には似合わない。純度100パーセントの宝石なんて、眩しすぎて、眩みすぎて、居心地が悪い
でも、こいつとなら
嘲り合いながら、殴り合いながら、嗤い合いながら
一緒に歩いて行けるような気がする
不快だったはずの雨にすらいつの間にか気づいていなかった。
もう服も肌もびしょ濡れだ。まあ、白濁と濁った紅を洗い流してくれるだけまだ良いかもしれない。
え、それで、これからは、この後シャワーまで浴びれるの?
それって
「 最高 」じゃん
これは救いでも、 神の様な奇跡でも、 救済でもない
「 最低 」で「 最悪 」同士、
「 魔女に勾引かされるくらいが、丁度いい 」
かたや背筋の伸びた、かたや少し猫背な、不格好でバラバラな背格好。
雨が二人の姿を霞ませていく、
けれどその姿は、何故だかとても、
美 し い も の だ っ た 。
きらきらと光が反射する
カウンター一枚を挟んで顔が近づけられる
あの時から何ら変わらない綺麗な琥珀色の双眸が、
変わらない食えない整った顔立ちを丸ごと飲み込むように見つめている
そして笑った。
それを受け止めるように、はたまた、受け止めて溶かして飲み込むように。
満更でも無いような、心底満足そうな顔で、また一つ食器に手を伸ばすくらいの、そんな日常的な素振りで。
咎める様な目に一つ苦笑する。彼は笑って咎める事は無いし、ちゃんと睨んで来る。そこが良い。そんな所が好きなんだ
それは彼にしては珍しく真剣な表情と声だった。笑いながらもその目にはなにかが籠っている。
だからこそ、いつもの調子で返した。鼻で笑い飛ばした。見えもしない未来を想像させるなと一蹴した。
そんなカナを見て、アクシアもまた、どこか満足そうに笑う
時 刻 は 午 後 二 時 過 ぎ 。
ただ一つ、ミルクティーの中に入った氷が、のんびりと、自適にからんと音を立てた、そんな昼 。
アクカナアクでーーーす!!この2人に萌えてるのが現状この世界で俺一人とかどう考えてもおかしいのでジャブ布教がてら二人の日常(と出会い)です!!
この二人、ふたりっきりの時だといっつもこんなやりとりしてます
哲学的なことを言うアクシアと
頭使うの好きじゃないけどそれなりに出された問いに答えるカナ
この二人って大概ライブ感です。そこがいい
この二人って顔面偏差値はどっちもカンストしてるのに蓋を開けたらトんだイロモノなんですよね そこが良いんですよ ホント オタク特有の斜に構えた逆張りもありますけどこういう逆張りならどんどんしていけばいいと思うの
アクシアはやけに哲学的で周りくどくも見える言い回しをしがちですがそれをするのは決まってカナ相手だけです。普通にも話せるけどカナ相手ならそれに返してくれると理解ってるから持ち掛けるのです 彼が自分の本性のうちの一つを見せるのはカナ相手だけなのです そう、アクシアくんはカナとお喋りするのが大好き!!この時点でなんか良いよな 既に完成されてる友情と信頼の表れって感じで
アクシアってぶっちゃけカナと痲瑙のことベタ惚れに溺愛してるし二人のこと相手になると割と気持ち悪くなるんですけど(真実)
カナもそれをバッサリキショ~~って言いつつも心底嫌がってはいないんですよね。この二人はもう完成してるからこういうじゃれ合いが出来るんですよ。だからね、この二人は尊いんですよ
この二人のイメソンといえば煮ル果実氏のサルバドールですね~~~これが本当に良いんですよ
猫も杓子も天才のフリした凡人で、なら自分達だって最低最悪で良い 自分達は最低最悪であって始めて形を成す だから綺麗になるな、汚いお前だけが綺麗なんだ、なんて言うんです アクシアは綺麗なカナも汚いカナも大好きでしょうけどね カナは…どうだろうね?
聖母みたいなツラした醜いアクシアこそがカナにとっての救いで
何度でも言えるくらいアクシアにとってはカナが当然の如くどうしようもなく救いで
だから二人は「 「 地獄で待ってんぜ 」 」なんです お互いにそうやって手をひらひら振れる関係 本当この二人はに地獄で待ってんぜってこれに尽きるんですあのね本当にねアクカナアクってほんとにヴォア゛!!!!!!!!!!(暴発)
綺麗に煮詰まってるんですこの二人は。おにショタに見えて全然おにショタじゃない、傷の舐め合いともまた違う、お前ってほんと最悪だなwwwって笑い飛ばしながら隣を歩く、そんな関係 そしてそこに入り組み過ぎた二人だけの世界を良い感じに調和してくれる地に足ついたBL厨陰キャオタクが加わればーーーー!?はい!!クバトリ!!!!確かにクソバカトリオの名の通りって思ったでしょ今!!!!そこがいい!!!!!!
これでさあ身長185:145なのヤバくない!?ヤバいよね!!!見た目おにショタなのになんか中身は常に殴り合いつつ愛しあってるこの…ね!!!
ということでアクカナアクでした 全員沼れとはいいませんが是非にね、キャラ単体でもいいです クバトリに興味を示してくれる人がいればいいな、と思う限りです いや有難い事にねとがうみマギアンはすごい安定した人気を得てるんですけどそれ以外にも勢力広げたいのだって皆大好きだし私しかまだ知らないような沼に沈める魅力いっぱいなんだからね!!!!!
九千文字も何を書いてるんでしょうかね。九千文字もすごい!!とか良いのでとにかくアクカナアクを 吸って
乙でした〜〜〜〜〜
ア ク カ ナ ア ク は 良 い ぞ












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。