私は想像を膨らませてみるけど、見たこともないそんな世界をちゃんと理解することはできなかった。
できるのは、ベラの表情や声からその苦しさを感じるとることだけ。
ユリシーズの日記は、ここへ来た1日目から始まる。
私はそれを声に出して、ゆっくり想像しながら読み上げる。
1日1日読み進めていくごとにユリシーズは魔女に恋い焦がれていく。
ページいっぱいに書かれている文字からは「幸せ」という気持ちが伝わり、私も魔女に恋をしているような気分になってしまう。
けど、あるページでその日記は急に終わりを告げる。
ベラは日記にキスを落とし、愛おしそうにそれにすり寄る。
私の口にベラの肉球が押し当てられ、最後まで言い切ることができない。
ベラはとても苦しそうに何とか言葉を言い切ると、日記の上で丸まって目を閉じてしまう。
ベラはお腹を上下させて眠りについた。
私は座りながら目を瞑って、ユリシーズの気配を探そうと神経を集中させる。
けど、気配というものがいまいちわからなくて、思うようにはいかない。
その時、私の肩に温かい何かが掛けられた。
とっさにベラに渡された鈴を振ると、小さいけど甲高いその音が空気を揺らして部屋に響く。
目を開けて振り向けば、私のすぐ後ろにユリシーズが立っていた。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。