「代わってやれたらいいのに」
何度そう思ったことか。
土埃を払うように手の甲でそれをなぞる
実際、僕の顔がうつるほどに、それは綺麗だった。
触れた石の塊は、加工されて平らな輝きを持って僕の指に吸い付いた。
ここに、命が息だえているのだ。
まだまだ先を生きるはずだった、これからもきらきらと輝いただろうモノが眠っている。
本当は、そこには僕がいるべきだった。
代わってやりたい。代わってほしい。
願わくば、その冷たい土の中で、とろけるような甘い眠りに浸っていたい。
その方が、随と楽だろうに。
僕は、生きるしかないのだ。
せめてもの償いと称して、生を全うしなければならない。彼の為に。自分のために。
地が裂け、天が降ろうとも、苦しみながら生き続けなければいけない。
零れた雫を飲み込むように、石はきらりと光った
幾度となく言葉を紡いでも、是も非も、もう何も返ってこない。
花を添え、春の風が吹き込む中、この土の中に眠る彼の名前を呼んだ
お前は、今の僕を見たらなんと声をかけるだろうか
縋るように手を握る
普段は好ましいはずの静寂が、頭に響いて酷く痛かった
マスターは眉を顰める
彼が閉じた扉が、ぱたんと音を立てる
後で謝らなければとドアを見つめた
きぃ、とドアを引いた
立ち止まっているばぁうさんに会釈をして、ダイニングに荷物を置きに行く
無意識に、頭に手を置いた
窓際に座って外を眺める
チカチカと光る星はまるで夢の中のような感覚にさせてくれた
枕元で書き物をしていたマスターがそれを閉じて僕に返事をする
握った手によって寝巻きのズボンに皺が寄る
一切ない、と言うように首を振った
そうまさんに渡されたクッキーを思い出す
穏やかに流れる風が、僕の髪を靡かせた。
まるで、僕を生けるものとして扱うように。
「愛されてんね」
ばぁうさんの言葉が頭の中で反復する
愛なんて
独占欲や嫉妬等のどす黒い感情を
詩的表現しただけの
入れ物に、不要なものじゃないのだろうか
夜風の音が
薄暗い部屋の、空気を響かせた












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。