むかしむかし、あるところに。
5人の少年がいました。
性格はバラバラでも、5人はとっても仲良しでした。
そして1人、その5人の他にもう1人。
他とは違う男の子がいました。
無表情で無口。怒りもしないし笑いもしない。
他の人たちはその子のことを「不気味」と言います。
ですが5人の少年たちは違いました。
花を添え、絵本を読み聞かせ、時にはくすぐり、時には一緒に川に飛び込んだ。
彼らは、1人の男の子に、「感情」を教えようとしたのです。
そしてその男の子は、
手に広げていた絵本を閉じる。
表紙には6人の少年が載っていた。
マスターからの、1番初めの贈り物なので。
そう綴れば、マスターは少しばかり目元を緩める
ドアから顔を出したマスターに声を掛け、席を立った
御一緒、と言っても、彼のベッドの脇にある木製の椅子に座って目を瞑るだけ。
マスターは、「睡眠は人間に最も必要な行為なんだ」と冗談か本気か分からない表情で豪語したことがある。
布団の中に潜り込むマスター。呼べば藤のような色の瞳が僕を覗き込んだ。
マスターは顎に手をあてる
そう言うと彼は目を閉じる
つられて僕も視界を黒に染める
丸い月明かりだけが、瞼の裏側にこびりついていた
彼の部屋のドアを3回ノックして問う
このドアの向こうには、何が広がっているのか、僕はよく知らない。
彼が言うには「面白味は無い」らしいが、よくここに籠るのは何故なのだろうか。
手提げを持って玄関のドアを開けた
まるで誰にも見られないよう隠されているように木々に囲まれたマスターの家。
山を下れば街に出る。
山を下ったすぐそこ。街の誰かと話していた金髪で長身の男が僕に手を振った
お前もいるか?と大きな紙袋を渡される
覗き込むと詰め込まれた沢山のクッキー。
首を傾げるそうまさんにつられて僕も首を傾げる
美味しいなどと、感じることはありませんが。
曇りのない緋色の瞳を覗き込むように眺める
半ば押付けられるように渡された紙袋が音を立てる
そうまさんはまた誰かに呼ばれて行ってしまった。
振られた手をまた返して足を進める
果物と野菜を提げて帰路を歩く
ふと、ひとつの店の前で立ち止まった
扉を押し、鈴の音が聞こえる
仕立て屋に入ると、出迎えてくれたのは、僕の服も仕立ててくれたゆきむらさんだった
そうまさんに貰った紙袋を差し出す
「STAFF」と書かれた札が提げられる扉を押すゆきむらさんに着いていく
引いてくれた椅子に座り紙袋を机に置く
ぎりぎりと赤髪の人の頭を抑えたゆきむらさんは器用にクッキーを咥えた
空のように広く青い後ろ姿を思い浮かべる
赤髪の人の首を抱えるゆきむらさん
ごめんな、ばぁうが。と謝った彼に、いえ。と返す
差し出された手を握る
握った手をぶんぶんと上下に振るばぁうさん
彼の頭にゆきむらさんが手刀を入れた
ゆきむらさんが僕の頭をわしゃわしゃと撫ぜる
機械いじり得意なんだよ、とクッキーをまた口にほおり投げる
「街のことはあいつに聞け」と言われたことを言うと、ゆきむらさんはそうか、と言った後にそう笑った
席を立つゆきむらさんを見送ると、ばぁうさんが顔を近づけてきた
ばぁうさんはふぅん、と言うと紙袋の中からクッキーを1枚取り出した
俺でも知ってる。とクッキーを1口唅むと、甘ぇ、と口をもごもごさせた
紙袋に手を伸ばした刹那、ゆきむらさんの声が掛かった
夕焼けが街を照らす
僕は帰路をばぁうさんと歩いていた
「俺送ってくよ!」と勢いよく宣言し、僕を引っ張るように店を出たのが5分前
自信満々にそう言うばぁうさん
ばぁうさんはまた、ふぅん、とだけ言う
ばぁうさんと僕の歩幅が重なる。
2つ並んだ影が、寂しげに揺れた












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。