そう言い出すあなたの下の名前はいつもより儚く、悲しみに満ちていた
俺だってそう思う、メンバーと離れたくないしもう一緒に歌えないなんで考えただけでも涙が出そうだ
俺があなたの下の名前の名前を呼ぼうとしたその瞬間、
岸くんが言った、
1歩遅かったみたい、
もう少し早かったら呼べたかもしれない、と思っていると
廉じゃないように見えた、
これまでアイドルを共にしてきたあの廉じゃない
その瞳の奥には悲しさや虚しさ、悔しさなどの感情があったように見えた
あと、愛しい人を見るような瞳、
そんな瞳が出来る廉が憎く、俺は好きになって貰えないのだろうかと
悲しい気持ちで押しつぶされそうになっていた
そうあなたの下の名前が廉のことを名前で呼んだ時、ビクッとした、
理由は分かってる
好きな人の口からライバルの名前が出たからだ
余裕のない男みたいな感じでカッコ悪く自分を感じる
でも内容は想像通りとゆうか、
廉の言葉に等しい回答が帰ってきた
正直、俺もそう思う。
でも、俺は分かっちゃうんだ
平気なフリをするのが上手い廉、
昔からそう
俺らよりダンスが劣っていたと廉が思っていた時、
平気なフリして本当は悔しいのに今すぐ泣きたいのに
我慢して笑顔見せて
残って自主練してたことだって知ってる
教えてあげようと思った時もあったっけ?
負けず嫌いなのかプライドが高いからなのか分からない
けど、呆気なく断られたなぁ
なんて思い出してると廉の怒声が楽屋に響き渡った
あなたがまだ日本にいる時、末っ子組の喧嘩は日常茶飯事だった
だが、ここまで怒っている廉を見たことがない
周りのメンバーを見渡してみたが
いつもは呆れ笑いをしているメンバーでも
この時だけは静寂に包まれていた
みんな顔がこわばっていたのだ
その静寂に包まれている楽屋に廉の静かな
静かな透き通る声だけが響き渡った
ずきっと来た気がする、
何度も言うけど廉はあなたのことが恋愛的に好きで
多分その高校から
毎日あなたにアピールして努力を重ねてきた廉、
そしてこないだあなたのことを好きになった俺、
比べただけでも泣きそうだ
これ以上はやめておこう
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。