挑発してはみたものの、勝てるわけがない
そんなの、オレが一番よくわかってる
手筋も間合いも癖もバレていて、オレと同じ動き...だけどそれの数段上の動きをするような人に勝つ?馬鹿な話だ
だから、こうする
そのセリフを聞いて、いつかの戦いを思い出す
橋の上で、戦ったあの日。あの日はオレが勝ったけど、今日はすこぶる相手が悪すぎる
とりあえず構えるーーーけど、
先生には、関係ないらしい
突っ込んでくる先生をいなそうとするけど、それすらも読まれていて脚をかけられる。つんのめって転びそうになるけど、なんとか手を付き顔面から倒れるのを回避する。
でも、また肘関節の辺りを脚払いで一蹴される。腕で自重をなんとか支えていたのに、肘が曲がって力が入らなくなると、当然倒れる。
必死で受け身を取って背中から倒れた。
瞬間、先生の脚がオレの顔すれすれ、右横の空を切る
息が上がって、まともに返事をできない
はぁ、とひとつ深呼吸をして息を整える。
オレは今日、死ぬかもしれない。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!