第6話

 【第一章】伍 
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2024/06/09 02:29








 挑発してはみたものの、勝てるわけがない

 そんなの、オレが一番よくわかってる


 手筋も間合いも癖もバレていて、オレと同じ動き...だけどそれの数段上の動きをするような人に勝つ?馬鹿な話だ








 蘇枋 
 にれ君、にげて 


 だから、こうする 

 楡井
 ぁ…、はいっ 





 師匠 
 ふぅん…足手まといになる子は 
 逃がすのかな
 師匠 
 他人に情を移すのはやめた方がいいと 
 教えたはずだけど?

 蘇枋 
 あなたみたいに自分至上主義の 
 冷酷無比な人間には
 なりたくないんだよ、わかりますか? 


 師匠 
 随分な言い様だね…… 

 師匠 
 教育が必要みたいだ 


 そのセリフを聞いて、いつかの戦いを思い出す

 橋の上で、戦ったあの日。あの日はオレが勝ったけど、今日はすこぶる相手が悪すぎる






 とりあえず構えるーーーけど、

 師匠 
 隙だらけだよ、隼飛 

 先生には、関係ないらしい




 突っ込んでくる先生をいなそうとするけど、それすらも読まれていて脚をかけられる。つんのめって転びそうになるけど、なんとか手を付き顔面から倒れるのを回避する。

 でも、また肘関節の辺りを脚払いで一蹴される。腕で自重をなんとか支えていたのに、肘が曲がって力が入らなくなると、当然倒れる。

 必死で受け身を取って背中から倒れた。


 瞬間、先生の脚がオレの顔すれすれ、右横の空を切る






 師匠 
 弟子のお前が私に勝つ? 

 馬鹿も休み休み言おうか 


 息が上がって、まともに返事をできない

 蘇枋 
 オ、レが馬鹿なら、っ 

 師匠 
 ? 

 はぁ、とひとつ深呼吸をして息を整える。





 蘇枋 
 オレを弟子にとったあなたは 
 オレ以上の馬鹿ですね、お馬鹿さん? 


 師匠 
 …やりすぎたらごめんよ? 






 オレは今日、死ぬかもしれない。











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