第16話

第12話
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2026/02/11 13:25 更新



本番が始まった。


歓声が、会場を揺らす。


袖から見えるステージは、

リハの時とは別物だった。


スポットライトの中に立つ二人は、

さっきまで楽屋でお弁当を見ていた人とは思えない。


ChroNoiRとしての空気。


私はインカムの指示を確認しながら、

袖で待機していた。


曲間。


一瞬だけ暗転。


そのタイミングで、

叶が袖に戻ってきた。


息は乱れていない。

でも額にはうっすら汗。


kne
タオル
あなた
はい



すぐに差し出す。


受け取るとき、

指先が少し触れた。


kne
水、もらっていい?
あなた
はい



キャップを緩めて渡す。


叶は一口飲んで、

小さく息を吐いた。


kne
助かる



それは、

ステージ用の声じゃなかった。


素の、落ち着いた声。


mob.
次、30秒です
kne
了解



タオルを返しながら、

叶が一瞬だけこちらを見る。


kne
後で



え、と思った瞬間。


kne
本番終わったら、ちょっと会お



さらっと。

本当にさらっと。

深い意味なんてなさそうな顔で。


あなた
…はい?



思わず聞き返しそうになる。


でももう、

ステージ転換の合図が鳴る。


kne
行ってきます



軽く笑って、

そのまま光の中へ戻っていった。


私はその場に立ったまま、

数秒固まる。


――ちょっと会お?


何の話?


業務連絡?

何か不備?


頭の中で理由を探す。


でも。


さっきの声は、

業務連絡のトーンじゃなかった。


歓声が再び大きくなる。


私は慌ててインカムを押した。


あなた
転換完了です



声は、

ちゃんと仕事用。


だけど心臓は、

ライブの低音よりうるさい。


本番はまだ終わっていない。


なのに。


終演後の時間が、

こんなに怖いなんて。


































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