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第9話

Episode.9【初めまして、世界】完
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2025/08/31 15:53 更新
  安易にひとまず身を隠す。私の護衛をしていたキミトスも、あとから合流した。

お巡りのヘリが着いていないかを、屋根下から確認するが、一面に青い空が広がっているだけだった。
耳を澄ましても、プロペラの音が聞こえてこないことから、追尾はされてないだろう。
キミトス
ボス、体の方は大丈夫ですか?!
ヴァンダーマー
安心しろ。
腕はまだ訛っているかもしれんが
体調は万全だ。お前はここ武器庫にいろ。整備を頼みたい。
私はブラックマネーを金庫の方に移してくる。
  ガレージまで行こうと歩き出すと、顔を曇らせたままのキミトスがあとに着いてくる。
しかし、いつまでも体調の悪化を危惧して見張られては困る。

「心配ない」。
言葉の代わりに片手を掲げれば、後ろからの気配もなくなった。

ガレージに到着し、愛車を出した。金庫がある事務所へ向かう。

たしかに、周りの目に不安と懸念の感情があるのは、私自身も分かっている。

約五日間も意識をなくし、頭の外傷は治っていたものの、心肺停止の状態が続いていた。

だが、今はこうやって、鼓動し続けている。

心臓の上に手を当てた。彼女は無事にやっているだろうか、ふと思い出す。

事務所のガレージに車をしまう。室内で大型服を脱ぎ、いつもの黒スーツに着替えた。
金庫ボス部屋の部屋の前まで来たところで、瞬時に胸の奥で何かが騒いだ。
ヴァンダーマー
( 誰かいるのか )
  人の気配を肌で感じとり、臨時体制に入る。

今すぐにでも部下を呼べばいいのだろうが、おそらく扉の奥にいるのは一人。
訛った腕を戻すにはちょうどいい。

近距離で銃をぶっぱなすのも悪くはないだろう。


勢い付けて扉を開く。

十字の線を確実に相手の頭に捉えた──スコープ越しに見える女の顔。
ヴァンダーマー
あなたの下の名前───
  捉えていた銃口を下げ、目を見開いた。

見慣れた顔に、あの五日間の記憶が蘇る。

呑気に悠々と寝息を立てて寝ているあなたの下の名前は、まさに平和ボケした一般人だ。

あなたの下の名前に近づき、倒れた体制で床に横になる彼女の体を揺らす。
ヴァンダーマー
あなたの下の名前、起きろ
  唸るような声を出したものの目を開けようとはしない。

流石にこのままとはいかず、腰に手をかけてソファーに移動させて寝そべらせた。
ヴァンダーマー
また会おう……か
  目の前の現象に最初は困惑したが、冷静に感情を沈めた。それは、ボスに必要なスキルであり、人前に隠すべきものだ。

だがひとつ、抑えられない感情が指先を動かし、髪に触れ唇へ運んだ。ゆっくりと下ろし、起きないように黒髪を撫でた。

嗚呼、そうだ。

あなたの下の名前だけに抱く、想いの名は



──『 愛 』。


封じていた言葉をぽつりと呟く。
直接彼女に届くことは無いだろうが、それでいい。彼女の前だけでは隠せない″感情″。

私は暫く彼女の隣に居ることにし、キミトスから貰った一本の煙草を咥えた。

きっとあなたの下の名前とはまた長い間付き合う関係になるだろう。



──おはようございます。



そんな声が聞こえた気がした。



































帰宅したら白髪の男に遭遇しました【van】
Episode.9【初めまして、世界】
  こんにちは、何度目のさささ塔です。
はい、最後までフィニッシュさせていただきました。ありがとうございます。ここまで見てくださった方々、応援してくださった皆様に感謝しかありません。

この、
〜 帰宅したら白髪の男に遭遇しました【van】〜
シリーズも完結ということで、達成感がとてもありますね。では、ここですアンケートを取りたいと思います。

このアンケート結果を採用するかは、私の気分とやる気次第なのでご了承ください。

最後によければ、投票していってください。




【追記】続編出しました。良ければ見てください


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