お館様の自室の隣、柔らかな布団に横たわった寿々は、深い眠りに落ちていた。
あまりにも激動の一日だった。毒の分解、太陽の拒絶、そして柱たちの衝突。
心身ともに限界を超えていた彼女の寝顔は、上弦の数字を背負う鬼というよりは、ただの幼い少女のようだった。
耀哉は、寿々の枕元に静かに座り、その規則正しい寝息に耳を傾けていた。
その傍らには、まだ立ち去りかねた実弥と義勇が、影のように控えている。
実弥が、腕を組みながら低く呟いた。
その視線は、寿々の焼けて赤黒くなった腕に向けられている。
耀哉は、寿々の前髪を優しく撫でながら静かに言った。
義勇が微かに眉を動かす。
昼間、彼女が熱心に古書を読んでいた姿を思い出した。
実弥は吐き捨てるように言ったが、その声に棘はなかった。
自分もかつて、復讐心だけで走り続け、自分の価値を証明しようと藻掻いていた頃があったからだ。
実弥は照れ隠しに顔を背けたが、その立ち姿には、
寝ている寿々を外敵から守るような、明確な意志が宿っていた。
静かな月光が部屋に差し込む中、最強の鬼は、自分を「怪物」としてではなく
「家族」として見守る三人の温かな気配に包まれて、一度も目を覚ますことなく眠り続けた。
彼女が再び目覚める時、屋敷の景色は、昨日までとは少し違って見えるはずだった。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!