第35話

34.夜の守護者たち
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2026/02/24 11:42 更新
お館様の自室の隣、柔らかな布団に横たわった寿々は、深い眠りに落ちていた。
あまりにも激動の一日だった。毒の分解、太陽の拒絶、そして柱たちの衝突。
心身ともに限界を超えていた彼女の寝顔は、上弦の数字を背負う鬼というよりは、ただの幼い少女のようだった。

耀哉は、寿々の枕元に静かに座り、その規則正しい寝息に耳を傾けていた。
その傍らには、まだ立ち去りかねた実弥と義勇が、影のように控えている。
不死川実弥
不死川実弥
……本当、鬼のくせに……
……あァして寝てると、ただの人間と変わりねェな
実弥が、腕を組みながら低く呟いた。
その視線は、寿々の焼けて赤黒くなった腕に向けられている。
不死川実弥
不死川実弥
……鬼も、寝るんだな。もっと、血に飢えて一晩中暴れ回る化け物だと思ってたぜ
産屋敷耀哉
産屋敷耀哉
彼女は、その本能と数百年の間、たった一人で戦い続けてきたんだよ
耀哉は、寿々の前髪を優しく撫でながら静かに言った。
産屋敷耀哉
産屋敷耀哉
実弥。君が今日、彼女を背負ってきてくれたこと、私は本当に嬉しかった。
君の優しさが、どれほど彼女の絶望を救ったか。
……彼女はね、自分が『呼吸』を使えないことに、人一倍負い目を感じているんだ。
富岡 義勇
富岡 義勇
……呼吸を?
義勇が微かに眉を動かす。
昼間、彼女が熱心に古書を読んでいた姿を思い出した。
産屋敷耀哉
産屋敷耀哉
そう。自分には産屋敷の剣士としての価値がないのではないか……と、ずっと怯えている。
だからこそ、無理を重ねて、独りで全ての任務をこなそうとしてしまう。
今夜のことも、その心の隙を突かれたのかもしれないね。
不死川実弥
不死川実弥
……馬鹿な。あんな出鱈目な力を持っていて、まだ価値を疑うのか
実弥は吐き捨てるように言ったが、その声に棘はなかった。
自分もかつて、復讐心だけで走り続け、自分の価値を証明しようと藻掻いていた頃があったからだ。
富岡 義勇
富岡 義勇
……御意
不死川実弥
不死川実弥
……チッ。……まぁ、お館様がそう仰るなら
実弥は照れ隠しに顔を背けたが、その立ち姿には、
寝ている寿々を外敵から守るような、明確な意志が宿っていた。

静かな月光が部屋に差し込む中、最強の鬼は、自分を「怪物」としてではなく
「家族」として見守る三人の温かな気配に包まれて、一度も目を覚ますことなく眠り続けた。

彼女が再び目覚める時、屋敷の景色は、昨日までとは少し違って見えるはずだった。

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