完璧なルートで逃げたはずだったのに、私はなぜか袋小路で見つかった。雨が振っていたので、雨宿りと休息も兼ねていたらこのザマだ。
連れ戻されて2日前のように清潔にしてもらい、応接室に通された。広いし、眼の前にいる乱歩という人が神妙な面持ちで此方を見てくるため落ち着く暇がない。
この人の言葉を、どれだけ信用していいかわからない。…でも、助けてくれた。お風呂に入れてくれた。ここで何も言わないのは、この人たちの思いを無下にするような行為だろうか。だとするなら私は、きちんの応えなければいけない。
きっと前のままだったら、私はまた逃げるだろう。それじゃあいけない。自分を変えるのはいつだって環境じゃなく自分だ。…あの生き方も、私が望んだからやったことだ。
私は質問されたことを丁寧に、ひとつひとつ言葉を紡ぐように、この人たちにうまく伝わるように話した。
一瞬、蝶の金細工をつけた女の人が大きく目を見開いた…ような気がした。
嗚呼、嗤われてしまうだろうか。この人たちは、私の言葉をどれだけ信じてくれるだろうか。他人に信用されるというのは、こんなにも恐ろしい。
ぎゅっと、膝小僧の上で両手を握って、親に怒られる子供のよう。なんて惨めで、恥ずかしい。
それからなぜかトントン拍子に話が進んで、入社試験なるものを行い、現在晴れて武装探偵社の社員をしている。外の世界にまだ恐怖心があるのと、バレたら危ないことから事務仕事が主だが、時々任務に混ぜてもらっている。長いものに巻かれるとはまさにこういうことであろうか。
入社試験なるものは任務同行だった。社長の秘書から、乱歩さんの探偵助手(尤も、ほぼ何もしていない)、与謝野さんの治療に同行、などで、詳細はよく知らないが根気を買われたらしい。
7月中旬のことであった。
2年後、普通の任務も増えてきて、だいぶ武装探偵社の雰囲気にも慣れてきたように思う。
なんと、新人二人目である。先日国木田独歩という背の高い男が入ってきて、「これからよろしくね」と会話したばかりであるのに。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。