第10話

甘い差入れ
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2024/09/10 23:15 更新
リクス
リクス
ジナ?まだ帰んないの?
練習室を覗いたリクスが声をかけてくる。
日もとっぷり暮れて、校舎に残ってる人数もまばらだ。
ジナ
ジナ
はぁっ、うん、もう少し…。
ジソナに提供してもらった曲の他、グループでももう一曲やることにしているので、明らかにオーバーワークなのはわかってる。
リクス
リクス
止めても無駄だってのはわかってるけど、ちゃんと食事はしなよ?
ジナ、代謝いいからすぐ痩せちゃうんだから、とリクスがブラウニーを差し入れてくれた。
お菓子作りが趣味で、たまにお裾分けしてくれる。
口に入れると程良い甘味で、疲労感が緩和されるようだ。
ジナ
ジナ
ありがと。
ほろ苦いそれを、ミネラルウォーターで流し込む。
レッスンを続けるべく立ち上がり、さっきうまく行かなかったサビ前から開始しようとスマホを操作すると、リクスがしゃがんだまま、私を見上げた。
リクス
リクス
…ねぇ、ジナ、家遠いでしょ?
遅くなると危ないから、しばらく私んち泊まったら?
私の方が近いし、アッパも迎えに来てくれるし。
ジナ
ジナ
えっ、それ助かる。
終電あるから、それまでには帰らないといけなかったし。
リクスは歩いて10分、私は電車で1時間ほど。
通学時間を考えると、寮生活の生徒より練習時間を確保するのが難しい。
リクス
リクス
…いいけど、10時には帰るからね?
じゃないとアッパに怒られちゃうから。
近いから、ジナは朝早く来て、練習時間確保したら?
リクスは早速、というようにスマホを操作した。
スンミナ
スンミナ
『あー、リクス、どうした?』
リクス
リクス
アッパ?
今日帰りに一緒に乗せて帰って欲しい友達がいるの。
スンミナ
スンミナ
『いいけど、アイツじゃないだろうな。
チャニとか言う。』
リクス
リクス
もー、違うって!
ジナっていう女友達!
オンマにも、しばらく泊めてあげたいから、伝えといてくれる?
スンミナ
スンミナ
『あぁ、わかった。
また学校出る時に連絡しなさい。』
リクス
リクス
はーい、アッパ、ありがとう、大好き♡
しばらくするとリクスの母親からも
『ジナのご家族の連絡先教えなさい。
ご挨拶しておくから。』
というようなカトクが入った。
リクスの両親は物分かりがいい。

約束した10時まであと30分。
最後の力を振り絞って、ダンスレッスンを繰り返す私を、飽きもせずにリクスは見守っていてくれた。
イリノ
イリノ
あら、いらっしゃい。ジナ。
リクス
リクス
オンマ、ただいまー。
ジナ
ジナ
あっ、…お邪魔します。
リクスの母親、リノとは何度か会ったことはあるが、未だにこの威圧感には慣れない。
イリノ
イリノ
ジナ、あなたちゃんと食べてる?
ジナ
ジナ
はいっ…!
イリノ
イリノ
そ、身体が資本だからね。
食べないとティッシュ詰めんわよ。
ひっと私が後ずさると、リクスが『オンマ、ジナをいじめないでー!』と庇ってくれる。
リクス
リクス
ジナ、先お風呂入っていいよ。
着替えは私の部屋着、適当に貸すね。
ジナ
ジナ
あ、うん。ありがと。
シャワーから上がると、リクスの部屋に向かう。
リクスはベッドに寝転がりながら、イヤフォンで真剣に何かを聴き込んでいた。
リクスのベッドの下には準備よく、布団が敷かれている。
ジナ
ジナ
リクス、あがりました。
リクス
リクス
あ、ジナ、早かったね。
ドライヤー貸すよーと、ドレッサーからドライヤーを取り出す。
それを受け取ると、リクスに尋ねた。
ジナ
ジナ
何聴いてんの?
リクス
リクス
あ、チャニヒョンが送ってくれた、私たちの候補曲。
一曲はカバーなんだけど、チャニヒョンがもう一曲楽曲提供してくれるって。
聴いてみる?とワイヤレスイヤフォンを片方差し出されるが、私は首を横に振った。
楽しみはお披露目の時まで取っておきたい。
ジナ
ジナ
リクスはチャニヒョンが好き?
聴きながら幸せそうに曲を口ずさんでるリクスを見て、自然と解いてみたくなった。
リクスは不意を突かれて、顔を上げると、次の瞬間には顔を赤らめる。
リクス
リクス
…好き。
だけど、まだ伝えたくない、と続ける。
自分の気持ちを押し殺すように枕をギュッと抱きしめるリクスが女の私から見ても可愛くて、チャニヒョンは幸せだな、なんて勝手に思う。
リクス
リクス
ジナは…?
ジナ
ジナ
え?
リクス
リクス
ううん、何でもない。
明日も早いんでしょ?早く寝ちゃおう!と言いつつ、私もシャワー浴びてくる、と足早に部屋を出ていく。
そんなリクスを横目に、睡眠学習と称してイヤフォンでジソンアの指導が入った音源をリピートしながら、布団の中で目を閉じる。
リクスがシャワーから戻る頃には、私はすでに夢の中だった。

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