練習室を覗いたリクスが声をかけてくる。
日もとっぷり暮れて、校舎に残ってる人数もまばらだ。
ジソナに提供してもらった曲の他、グループでももう一曲やることにしているので、明らかにオーバーワークなのはわかってる。
ジナ、代謝いいからすぐ痩せちゃうんだから、とリクスがブラウニーを差し入れてくれた。
お菓子作りが趣味で、たまにお裾分けしてくれる。
口に入れると程良い甘味で、疲労感が緩和されるようだ。
ほろ苦いそれを、ミネラルウォーターで流し込む。
レッスンを続けるべく立ち上がり、さっきうまく行かなかったサビ前から開始しようとスマホを操作すると、リクスがしゃがんだまま、私を見上げた。
リクスは歩いて10分、私は電車で1時間ほど。
通学時間を考えると、寮生活の生徒より練習時間を確保するのが難しい。
リクスは早速、というようにスマホを操作した。
しばらくするとリクスの母親からも
『ジナのご家族の連絡先教えなさい。
ご挨拶しておくから。』
というようなカトクが入った。
リクスの両親は物分かりがいい。
約束した10時まであと30分。
最後の力を振り絞って、ダンスレッスンを繰り返す私を、飽きもせずにリクスは見守っていてくれた。
リクスの母親、リノとは何度か会ったことはあるが、未だにこの威圧感には慣れない。
ひっと私が後ずさると、リクスが『オンマ、ジナをいじめないでー!』と庇ってくれる。
シャワーから上がると、リクスの部屋に向かう。
リクスはベッドに寝転がりながら、イヤフォンで真剣に何かを聴き込んでいた。
リクスのベッドの下には準備よく、布団が敷かれている。
ドライヤー貸すよーと、ドレッサーからドライヤーを取り出す。
それを受け取ると、リクスに尋ねた。
聴いてみる?とワイヤレスイヤフォンを片方差し出されるが、私は首を横に振った。
楽しみはお披露目の時まで取っておきたい。
聴きながら幸せそうに曲を口ずさんでるリクスを見て、自然と解いてみたくなった。
リクスは不意を突かれて、顔を上げると、次の瞬間には顔を赤らめる。
だけど、まだ伝えたくない、と続ける。
自分の気持ちを押し殺すように枕をギュッと抱きしめるリクスが女の私から見ても可愛くて、チャニヒョンは幸せだな、なんて勝手に思う。
明日も早いんでしょ?早く寝ちゃおう!と言いつつ、私もシャワー浴びてくる、と足早に部屋を出ていく。
そんなリクスを横目に、睡眠学習と称してイヤフォンでジソンアの指導が入った音源をリピートしながら、布団の中で目を閉じる。
リクスがシャワーから戻る頃には、私はすでに夢の中だった。















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。