第106話

EP.106
624
2024/05/12 08:00


そのあとの記憶は曖昧で、あまり覚えてない。

体と心が別々の行動をしているみたいな、、そんな感覚だった。

ハーマイオニーやハリー達に付き添ってもらいながら寮へ着くと、ロンがタオルを持って走ってきた。

そこまではなんとなく覚えている。




着替えるために1人、部屋に戻ってきた。
濡れたドラコのローブを握りしめて、ベッドに腰掛けた。

綺麗に使われたローブをじっと眺めながら、スリザリンのエンブレムをゆっくりとなぞった。

鼻の奥がツンとなり、視界が滲む。
ローブにポタポタと雫が落ちた。

髪から滴る雫なのか、
それとも涙なのか……




私の嗚咽が、静かな部屋に響いていた。




______________________
_______________






しばらくするとハーマイオニーが、そっとドアを開け部屋に入ってきた。

ハーマイオニー・グレンジャー
ハーマイオニー・グレンジャー
大丈夫…?……じゃなさそうね。

泣きじゃくった私の顔を見て、眉を下げて優しく微笑んできた。
あなた
ハーマイオニー……ッ
あなた
勘違いされても仕方ないね。
隠し事をしていたもの。
ハーマイオニー・グレンジャー
ハーマイオニー・グレンジャー
でも、それはマルフォイに無駄な心配をかけたくないからでしょう?相手のことを思ってついた隠し事なら、だいじょ…
あなた
……ちがう…ッ!!
あなた
私の能力を知って、
引かれたらどうしようって不安だった
あなた
ドラコに無駄な心配かけたくない
…それは…本当に思ってる。
あなた
でも一番の理由はきっとそうじゃない!!

引かれたくない。嫌われたくない。
「心の声を聞かれそうで近寄りたくない」
そんな風に思われたらどうしようって。
あなた
伝えるタイミングが遅くなればなるほど、
不安だったの…ッ。

私の視界には、涙でいっぱいだった。

下を向いて必死に自分の思いを伝えると、ハーマイオニーは優しく手を握ってきた。

ハーマイオニー・グレンジャー
ハーマイオニー・グレンジャー
もし…あなたがマルフォイの立場だったら?
自分の見えないところで、マルフォイが1人で能力と戦ってたらどう思う?
あなた
私に何もできないかもしれないけど…
支えたいって思う。一緒に悩んだり、
つらいことがあれば側にいたいって。
ハーマイオニー・グレンジャー
ハーマイオニー・グレンジャー
それは、マルフォイも同じよ。
同じこと思ってる。
あなた
もし引かれたら…
ハーマイオニー・グレンジャー
ハーマイオニー・グレンジャー
あら!そんなことであなたから離れてしまうような男と付き合ったの?あなたたちの愛は、そんなもの?
ハーマイオニー・グレンジャー
ハーマイオニー・グレンジャー
あとね、あなたのその能力は、たしかに厄介なこともあるし大変なこともあるけど、"個性"なのよ。役に立つことだってあったでしょう。
ハーマイオニー・グレンジャー
ハーマイオニー・グレンジャー
自分の個性を好きになって。

ドキッとした。

たしかに私が愛した男の子は、
そんなことで離れてしまうような人ではない。

何を今まで不安になってたんだろう。


「いつも支えられている」
と彼は私に言ってくるけど、支えられているのは私の方だ。


告白をしてきたときだって、
私は振られてしまうんじゃないかと思って、怖くて逃げようとした。

それでも彼は、逃げようともせず私と向き合おうとしてきた。

今こうして恋人として隣にいるのも、彼のおかげだと思う。





私は言葉の代わりに次々と出てくる涙のせいで、頷くことしかできなかった。

ハーマイオニー・グレンジャー
ハーマイオニー・グレンジャー
色んなことが不安なんでしょう?
ジェシーといま何を話してるんだろうとか。マルフォイは恋人がいることを両親に隠したいんだろうか……とか……。
あなた
……うんッ、
ハーマイオニー・グレンジャー
ハーマイオニー・グレンジャー
さっきフレッドが言ってた。すごく泣きながらジェシーが、廊下を走ってたって。あなたの代わりにマルフォイが怒ってくれたんでしょうね。
ハーマイオニー・グレンジャー
ハーマイオニー・グレンジャー
あと……マルフォイがご両親に言わなかったのは、あなたの存在を隠したいからとかではない。何か理由があるのよ。そもそもあれだけ純血にこだわってたのに、学校内であなたのことを見せびらかすほどよ??ご両親の耳に入ることを恐れるなら、もっと普段から隠そうとすると思わない?
あなた
…思うわ。
ハーマイオニー・グレンジャー
ハーマイオニー・グレンジャー
ね?
そもそも2人でそんな話を、今までしたことがなかったの?
あなた
なかった。気にはなってたけど…
不安にならないぐらい大切にしてくれてるから。
話さないと、ってなるタイミングがなかったのかも。
ハーマイオニー・グレンジャー
ハーマイオニー・グレンジャー
まぁ…たしかに。
あれだけ愛されてたら、気にもならないかもね…(笑)
あなた
でもいつかは話さないとって思ってた。
皆からドラコのご両親の話は聞いてたし。
一筋縄ではいかないかもしれないって
薄々は気づいてた。
ハーマイオニー・グレンジャー
ハーマイオニー・グレンジャー
この機会に話すべきなんじゃない?
全て。
ハーマイオニー・グレンジャー
ハーマイオニー・グレンジャー
そもそもあの女に言いたい放題言われて、このままじゃ腹が立つわ。
ハーマイオニー・グレンジャー
ハーマイオニー・グレンジャー
しっかりマルフォイと話して、誤解を解いてお互い不安なことを片付けたら、最後にあの女の前でキスぐらいしちゃいなさい!
あなた
もう…っ(笑)
ハーマイオニー・グレンジャー
ハーマイオニー・グレンジャー
それぐらいの気持ちでね!!

本当にハーマイオニーに助けられてばっかりだ。
今までたくさん背中を押してもらった。

親友の偉大さを改めて痛感させられる。


この子につらいことがあれば1番に助けにこよう。
側にいる。


そう心の中で呟き、ハーマイオニーを抱きしめた。

ハーマイオニー・グレンジャー
ハーマイオニー・グレンジャー
もう〜、冷たいわよ…(笑)
ほら!着替えて!風邪ひくよ

そう言いながらも、濡れてしまうことを気にせずに、抱きしめ返してくれた。






プリ小説オーディオドラマ