第8話

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2024/06/19 13:00
あなたの名前 (カタカナ推奨)は静かに翼をしまい、あの小さい廃墟のバルコニーに舞い降りた。

ガラスの割れた窓から室内へ入ると、部屋の奥、薄汚いベッドの上にサーシャが居た。
『ごめんね、遅くなった。』

kzh「いや、別に……何かあった?」

『ん~まぁ、大したことじゃない…』

kzh「言って。」
適当に濁しながらサーシャの隣に腰を下ろすと、追い討ちをかけるようにサーシャが顔を覗き込んできた。
どうやら誤魔化せないらしい。

あなたの名前 (カタカナ推奨)は暫し躊躇ったが、やがて観念したように話した。
『あの…さ、私まだ婚約者とか居ないでしょ?』

kzh「うん。」

『今日さ、お父さんに言われたの。
 そろそろ結婚しろって。』

kzh「うん、」

『でも私嫌なの。サーシャ以外の人と愛し合うとか。到底できない。
 …だから少しの反抗の意も込めてサーシャと踊ったら、やっぱり怒られちゃって。』

kzh「うん、…おれも、怒られた。」

『ふふ、そっか。
 …面倒臭いよね、上の人たちが仲悪いだけで。私達は関係ないのに。』

kzh「…恵まれてんのか恵まれてねぇのか分かんないよな。」

『ね。……婚約者、お父さんが勝手に決めるんだって。
 あと、今後サーシャと関わるなって言われちゃった。』

kzh「………そっか。」
そんなことを話していると、自然と目から涙が溢れ出てきた。
その涙を拭いながら、サーシャは優しく相槌を打って頷いた。
kzh「…え、お前父親に関わるなって言われたばっかなのに俺に会いに来たの?」

『え、うん。』

kzh「マジか…ww」
サーシャは少し呆れたように笑うと、あなたの名前 (カタカナ推奨)に口づけた。

そしてそっと押し倒し、その綺麗な髪を触った。


kzh「…あなたの名前 (カタカナ推奨)。」

『んー?』

kzh「行かないで。」

『………うん。』

kzh「あなたの名前 (カタカナ推奨)が俺以外の誰かと結婚すんのとか、見てらんない。」

kzh「そんなとこ見たら、俺、もうそいつのこと…、」

『大丈夫。』
あなたの名前 (カタカナ推奨)はその手でサーシャの頬を挟み、綺麗な瞳で見つめて言った。
『それは私も同じだから。
 正直怖いし、この先めっちゃ不安。
 でも私は今ここに、サーシャの目の前に居る。』
両腕を広げ、サーシャに微笑みかける。
『だから、今は私達の時間を楽しもう?
 今の私はサーシャだけのものだよ?』
kzh「…お前さぁ……」
サーシャは少し恥ずかしげに顔を剃らし、もう一度あなたの名前 (カタカナ推奨)を見つめた。

そしてゆっくりと顔を近付けた。

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