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第1話

261
2024/06/06 12:00
ここは魔界。
悪魔やサキュバス、吸血鬼などのお伽噺でしか見ないような人外達が群がる異界。

しかし、いくら人外と言えど彼らの中身は人間と同じようなもの。

派閥による争い…所謂いわゆる『対立』が、ここ魔界でも長く続いていた。


その派閥の中心に居たのは────


「やっぱり素敵なお方だわ~!」
『そうね。しかも後継ぎが三人も居るのよ?しかも全員男性。ラグーザ様の方が良いに決まってるじゃない。ラグーザ様万歳!!』

魔界で名を馳せるトップレベルの貴族、ラグーザ家と


「後継ぎ?男性?はっ、くだらない。大事なのは力があるかどうかだ。」
『そうだそうだ!!カーライル様の威力を知っているか?魔界では魔力の強さで位が決まるんだよ!そんなことも分からんのだな。』

その隣国を支配する、同じく上位の貴族であるカーライル家。
ラグーザ家とカーライル家にはどちらも負けず劣らずの権力、財産、地位、名声があった。
そのせいあってか、両家は互いに敵対していた。
どちらかがその気になればすぐさま魔界全体を巻き込むような戦争が起こる、そんな状況が既に100年以上続いていた。
『…は~ぁ、全くしょうもない。』
町の片隅の古い廃墟で、目も眩むほどの美少女が小さく呟いた。
『散々人間のこと下に見といて、自分達も人間と同じくらい惨めで醜い争いをしてるのにいつ気付くんだろ。』
退屈そうなぼやきに応えるような微かな羽の音とともに、細身の男性がその廃墟にゆっくり降り立った。
『ぁ、サーシャ久しぶり。』
サーシャと呼ばれた男は、美しく長い銀髪を風になびかせながら静かに少女の元へ寄ると、そっと優しくその唇にキスを落とした。
kzh「…ん、おひさ。」

『んふ、どうしたの会って早々。寂しかった?』

kzh「まぁ、そんなとこ。」

『あれ?珍しく素直だね(笑)』

kzh「っるせ……」


(…私達はずっとこうして両想いなのに)


(いつになれば2人手を繋いで人前に出れるのかな。)
少女───カーライル家の一人娘であるあなたの名前 (カタカナ推奨)・カーライルは誰も聞こえない心の奥底で嘆いた。

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