声が聞こえる。聞き覚えのある声が……そんな声に導かれるように意識が浮上していき重い瞼を開ければ太宰さんと中也が居て……2人して泣きそうな顔で私を見下ろしていた……
私のアルバムを手にして中を見る太宰さん……そのアルバムの写真は澁澤龍彦に会った時に燃やされたよ……太宰さんも隣にいたでしょ?なんて思いつつ、いつも写真を隠している場所を知っている中也がポケットに手を突っ込み引っ張り出すが……そこにはただ、まだ先代以外かけていない頃に撮った写真しか隠していない……
燃やして治してよ……と私に写真を渡すが……もう正直体は動かない……それに、太宰さんなら知ってるでしょ?私が撮った写真以外では意味が無いことを……なんて、私に写真を握らせ無効化しないために離れていく太宰さんを呼び戻す……
触れない距離に立ち私を見る太宰さんと私を支えている中也の目はまるで不安に揺れる子供のようで……自然と笑みが浮かぶ……
もう言葉が聞こえない……じょじょに見えなくなっていく……それでも、最後まで彼らを見て微笑む……
君がため惜しからざりし命さへ
ながくもがなと思ひけるかな
すみません。
上の百人一首の解釈は少し変えさせていただきました。
本当の訳詞は
《あなたのためなら、捨てても惜しくはないと思っていた命でさえ、逢瀬を遂げた今となっては、(あなたと逢うために)できるだけ長くありたいと思うようになりました。》
です。↑の訳詞はグール先生引き用?させていただきました。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。