澁澤龍彦に案内されここ、骸砦の最上階に移動した私たち。ようこそ、わがコレクションルーム、ドラコニアへ。と扉を開き、現れたのは壁一面に置かれた飾り棚に飾られた赤い結晶……階段があり、上へとまだづく壁もびっしりとその結晶が飾り付けられていた。
ならばさしずめ君は、悪魔に情報を売る死の鼠だな。と言ったかと思えば目を細め私を見てくる。
一緒にされたいらだちから舌打ちをした私に澁澤龍彦はクスクスと笑う。澁澤龍彦を睨んでいればフョードルさんがさりげなく澁澤龍彦と私の間に割って入る。
なんて笑えば、フョードルさんに諌められるように視線を向けられるがその視線を無視して結晶体を眺める。
しかし……この結晶体達は澁澤龍彦の霧に襲われ異能力者から分離して異能力者を襲う……もし、隠し持っていた写真の存在を澁澤龍彦にバレていたら私はここにはいなかっただろう……異能により私は殺されていた……
背後から聞こえてくる3人の会話を聞いていれば、気配を感じ振り向いて太宰さんの背後にある棚を見れば光が集まり始め、輝きを強め凝縮され、やがて赤い結晶に変わり、棚に鎮座する……
足音を鳴らしその結晶に近寄り顔を近寄せ結晶体を眺める。が、それは一瞬で……歩いてきた場所へと戻り、そして部屋の中央にあるなにか不思議な台座に視線を向ける。
つぶやくように話す澁澤龍彦。私は澁澤龍彦に背を向けて再び棚に視線を向けた。私には分からない……澁澤龍彦や太宰さん、フョードルさんみたいに頭が回るわけじゃないから……これはきっと、天才にしか分からない会話だから……
まもなく訪れる。このヨコハマの異能力は全て、私のものになる!そう笑った彼に鼻で笑う。自分の異能力に勝てる人間が、1人でもいると思うか?と澁澤龍彦は高らかに笑った……
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。