春の終わり、まだ少し風が冷たいソウルの午後。
あなた がキャップを深くかぶりながら、マスクの奥で小さく呟く。
ドヨンはマスク越しでもわかるほど優しく微笑んだ。
ふたりが歩いていたのは、漢江の近くにある、
静かな路地裏のブックカフェ。
窓際のテーブルに並んで座りながら、
雑誌をめくるふりをして、たまに目が合う。
———
あなた の言葉に、ドヨンはふっと笑った。
目を合わせず、テーブルに置かれた手をそっと重ねる。
誰にも見つかっちゃいけないのに、
鼓動だけは、隠せなかった。
カフェを出たあと、近くの公園を歩く。
ふたり並んで、手はつながない。けど、心の距離はとても近かった。
その言葉に、彼は立ち止まった。
———
2人はしばらく黙ったまま、空を見上げた。
ビルの隙間から見える、午後の淡い空。
誰のものでもない、ふたりだけの時間が、そこに確かに流れていた。
あなた は彼を見つめて、ただ一言。
———
その日、別れ際。
ドヨンはそっと、あなたの耳元でささやいた。
その言葉が、深く深く、あなたの胸に染み込んだ。















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。