あの日、世界の音がひとつ消えた。
姉が自殺したと聞いた時、胸に穴が空いたような感覚よりも先に[違和感]が私の中で芽生えた。
姉が自殺するなんて思えない。
自殺するような理由がどこにもなかったからだ。
私を無視して自殺という言葉が勝手に真実という場所に留まり続けていた。
姉が死んだのは丁度1年前の話。
姉の居た部屋は閉ざされ、塵が積もっている。
そんな姉が自殺したという記憶も少しずつすり減って消えていくはず。
けれど私の中では今でも1年前と変わらない形を保っている。
私は1年たった今でも姉が自殺したとは思えなかった。
ブーッ
スマホが震えた。
私はスマホを確認した。
短いボイスメッセージが送られたようだ。
送り主の名前はない。
ただ、そのボイスメッセージを聞いた。
[……めい。まだ探してくれてる?]
時が巻き戻ったのかと思った。
そのボイスメッセージは姉の声に似ていた。
指先が勝手に動き、私は返信をしてしまった。
[お姉ちゃん?お姉ちゃんなの?ねぇ自殺じゃないでしょ?教えてよ。]
と。
だが返ってきたのはマップの画像。
その画像が指しているのは町外れにある廃ビルだった。
スマホだけを持ち、そのマップが指しているところへと向かった。
ここは姉が最後に来たとされる場所。
そこに私は足を踏み入れた。
外から来る冷たい風が、私に帰れと言っている気がした。
ザッザッザッザッ……
けれどもう止まれない。
1年前の今日、姉が自殺じゃないということを確信した時からもうブレーキは壊れていたのかもしれない。
《姉は自殺じゃない》
その根拠もない私の勘がここまで連れてきた。
私はまだ知らない。
これから踏む影の正体だけが、
1番知りたくないものだということに。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。