朝顔柄の浴衣。
賑やかな屋台。
提灯の光に照らされる笑顔。
打ち上がる花火。
人々の歓声。
きみの声。
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私、橘 亜沙は大学1年生。
大事な大事な、彼がいる。
『 相江 克樹 』
それが彼の名前。
高1の時一目惚れしたのが私で、
先輩だった克樹は私のことなんて全く知らなかったみたいでした。
克樹のいたバレー部のマネージャーになって、いつのまにか仲良くなった。
連絡先も交換して、たくさんたくさんやりとりした。
どんどん克樹のこと大好きになって
どんどん増えてく履歴と比例するみたいでした。
そして。
克樹の卒業の日、私は克樹に告白しました。
「ずっと好きでした。
付き合って下さい。」
私もどこかでわかっていました。
先輩はバレーの推薦をもらって
バレーを続けるから
きっと叶わない恋なんだってこと。
でも、先輩は優しかったから。
もしかしたら、…って甘えたんです。
だけど、
「俺は、バレーで強くなりたい。
このチャンス逃すわけにはいかないです。
ごめんな、亜沙。」
そう、言われてしまいました。
泣いて泣いて、どうしようもなかった。
あっという間だった。
すぐ消えてしまった。
それでもしばらくしたら傷は塞がって、
引きずってはいたけどちゃんと前を見れるようになりました。
それはきっと、克樹との思い出がいっぱいあったからです。
たくさんもらった励ましの言葉に、なぜか背中を押されていました。
失恋したはずなのに、克樹との思い出は何1つ消したくなくて、忘れたくなかった。
そうやっているうちに私は高校3年生になった。
何人かの男の子が告白してくれたりもしたけど、まだどこかに先輩が残っていて素直にうなずくことはできなかった。
そんな毎日をおくっていた私のケータイに
その夏
一通のメールが届きました。
差出人は、
" 相江 克樹 "
「…え」
それしか言うことありませんでした。
びっくりして。
で、内容読んだら。
『久しぶり。元気?
亜沙が3年生なんて信じられません。笑
突然なんだけど、次の日曜日空いてる?
俺と、祭り行きませんか。』
いや、
もっとびっくりしました。
今思えば、他の人ならきっと少しは何か疑ったりするんだろうなと思います。
けどその時の私は急に先輩に会いたくなってしまって。
『お久しぶりです。
元気にやってます。
お祭り、行きたいです!
楽しみにしてますね!』
って、送っていました。
このメールが送られてきたのは水曜日だったので、3日間ずーーっとそわそわしてました。
そして当日。
朝顔柄の浴衣を着て、
髪をおだんごに結って、
お祭りへ行った。
2年たって会ってみて、
先輩の、私がずっと好きだった笑顔は変わらないなぁ
って思ったのを覚えています。
大学の話を聞いたり、バレー部のことを話したり、話が途切れることはなくて、
あっという間に花火があがり始めた。
綺麗ですね。
そうだな。
会話は初めてそこで途切れて、
花火の音と
周りの歓声だけが聴こえていた。
フィナーレが近づいて歓声も大きくなってきた時
不意に
亜沙、って名前を呼ばれて
好きだ、って言われて
そしたら
涙が止まんなくなって
あぁ、先輩のこと好きだったんだなって実感して
私もです、って言いました。
抱きしめられて
先輩は、克樹は笑って
私は泣いて
青い
夏色の花火が
大きく咲きました。
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「 亜沙 」
私の名前を呼ぶ克樹の声は
私を大事にしてくれてるってわかっちゃうくらい
優しい優しい声です。
今日は
浴衣着てって頼まれて
1年前と同じ格好で
お祭りデートです。
ただ、1年前と違うことは
私の隣の克樹と手を繋げることと
先輩、から
克樹、と
呼び方が変わったこと。
私の初恋は儚く消えたけれど、
私の心はずっと奪われたままでした。
たくさんたくさん愛をくれた克樹に
私も愛をあげられるよう頑張ります。
「 克樹 」
私はそう彼の名前を呼んで、手を繋いだ。
アサガオの花言葉
はかない恋、固い絆、愛情
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。