放課後のチャイムが鳴った。
春音は急いで図書館に向かう。
教室では噂が広まっていた。
蒼くんが来月転校するという噂がーー。
だから春音は急いで向かう。
蒼くんに真実を聞くために。
図書室のドアを開けるといつも通り窓際の席には蒼くんがいた。
春音の胸がぎゅっと締め付けられる。
手が震えている。
蒼くんは、少し微笑んでそう言った。
でもその顔はどこか悲しそうだった。
春音は、そんな蒼くんになんて返せばいいのかが分からなくて、ただ頷くだけだった。
帰り道。
いつもは何も考えずに通る道が、今日は長く感じる。
一歩一歩、足が重くなる。
通り過ぎる風も、昨日までのように優しくないーー。
そんな気がした。
頭の中で蒼くんとの日々を思い出した。
始めて2人で聴いた曲。
雨の日に聞いた音楽。
休み時間に交わしたちょっとした会話。
全部、もうすぐなくなりそうだと思うと、涙が出そうになった。
でも、絶対に泣かない。
蒼くんといる時は笑顔でいたいから。
そう決めた春音は1人つぶやいた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。