蒼くんは学校に来なかった。
朝、席が空いてるのを見て、胸のあたりがふっと重くなった。
別になんでもないように見せたけど、休み時間の度につい隣を見てしまう。
ノートを開いても、文字がうまく頭に入らない。
窓の外では雨が降っていて、グランドには水たまりが広がっていた。
放課後になっても蒼くんは来なかった。
図書室に行ってみたけど、あの窓側の席は空っぽだった。
春音は本を開いたまま、何度もページをめくっては戻して、同じページをみていた。
静かすぎて、時計の音ばかり耳に入る。
ふとそう思った。
蒼くんと一緒に聴いた音楽。
いつもは流れているはずなのに、今日はなにも聴こえなかった。
帰り道。
傘から落ちる水滴の音だけが響いていた。
家までの道がなんだか長く感じた。
スマホを取り出して、プレイリストを開く。
蒼くんと一緒に聴いた曲をタップする。
イヤホンを "片耳だけ" いれて歩く。
でも、なんか違った。
同じ曲なのに、音が少し遠く感じた。
春音は思わずつぶやいた。
その声は雨に消えていった。
明日は会えるかな...。
そんなことを考えながら、春音は家のドアを開けた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。