あなたを保健室のベッドに寝かせ、
俺は、
その横に椅子を置き、座った。
あなた「おなか、すいてないん?」
駿佑「大丈夫。」
あなた「戻って、いいよ、」
駿佑「ちょっとここいるよ、」
あなた「…うん、」
何してるんやろ。
学校で、
あんな目立つところで。
でも、
気付いたらああしてた。
あなた「大丈夫なん、」
駿佑「ん?」
あなた「女の子、叫んでた」
駿佑「…やばいやんな、」
あなた「人助け、って、許されるかな」
駿佑「ごめんな、なんか、あなたにも迷惑かけるかも」
あなた「ううん、…助けてほしかった、だから、よかった。しゅんが、助けてくれて、嬉しかった。」
あなたは少し恥ずかしかったのか、
布団を深くかぶった。
駿佑「まだしんどい?」
あなた「気持ち悪い、」
駿佑「そっか…」
あなた「さっき、怒られちゃった、」
駿佑「え?」
あなた「授業中、寝ちゃって、」
駿佑「仕方ないやろ、疲れてるもん、」
あなた「それでもちゃんとやってる人もおる、って、」
駿佑「理解ある先生ばっかりやのに、珍しいな。」
あなた「わたしが悪いのはわかるけど、…ちょっと嫌やった」
駿佑「気にすることないよ。」
布団から覗く小さな手を、
俺はそっと包み込んだ。
あなた「手、冷たいな」
駿佑「あ、ごめん…」
あなた「冷たくて、きもちい、」
あなたは小さな手で、
俺の手を握った。
駿佑「ちょっと身体熱いんちゃう、?」
あなた「さっきまで寝とったからかな、」
あなたは、布団から顔を出して、
俺をじっと見た。
駿佑「ん?」
あなた「何もないよ、」
少し赤くなった頬をそっと撫でると、
あなたはゆっくり目を閉じた。
駿佑「おやすみ」
俺は、あなたにそっとキスをした。
ほとんど無意識やった。
あなたの目が開き、咄嗟に離れた。
駿佑「ごめん、つい、」
あなた「学校…やで、?」
駿佑「ほんまごめん、…あかんな、あなたとおると、なんか、あかんわ。…ほんまごめん、戻るな、」
あなた「待って、!」
あなたはベッドから起き上がり、
腕を伸ばして、
俺の制服の裾をぎゅっと掴んだ。
あなた「いやや、」
駿佑「…どうしたん、?」
あなた「ここきて、」
ベッドの上に乗ると、
あなたは俺の肩にちょこんとおでこをつけた。
あなた「行かんといて、」
駿佑「うん、行かへん。」
これでいいん?
あなた「もう一回、して、」
駿佑「うん。」
唇がふれあう。
あなたは俺の胸に顔を埋め、
そのまま眠りについた。
なぁ、あなたは俺のことどう思ってるん?
このままずっと、
2人きりでおれたらいいのに。
…こんなこと思って、
アイドル失格やな。
いや、
とっくの前からもう、
アイドル失格や。
駿佑「大好きやで、あなた」
俺はもう、
あなたしか見えへん。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。