今日は、星がよく見える。海に言われて、8時に海の家に来た。
海はもう、外で待っていた。
半袖の白いワンピース姿の海が扉の前で立っていた。珍しく、長い黒い髪を纏めていて白いうなじが露わになる。
俺は、手を海に差し出す。
海が足早に俺の横を歩き去って行く。
何だか腑に落ちない。
海の夜に光が二つ。
シュウーっと音をさせながら、火が消える。
新しい花火を海に手渡す。俺は、花火に火をつける。
赤っぽい火が噴き出す。
海の花火に火が移る。
俺は海が嫌がることをして、また海を困らせていたのか。
海。こんなに、人の名前を呼ぶだけで緊張するものなのか?
期待してはいけないとは思っていても、してしまう。
もしかして、海は……
二人の花火の火が消えていく。
海が少し笑みを浮かべる。
俺は、線香花火を海に手渡す。
二本の線香花火に火が着いた。
海の眉間に皺が寄る。とても、真剣な表情だ。
海が線香花火を応援している。笑い出しそうになるのを堪える。
海の火の玉が落ちた。
海が肩を落とす。
次があることが少し嬉しかった。
海が少し戸惑ったような表情をした。
右手にバケツ。左手に海の手。
海の家の前に着く。
俺は手を離そうとした。
海が俺の手を離そうとしない。
海が急いで俺の手を離した。
海は俺の顔を見ないように、家に入ってしまった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。