明らかに動揺しているグクの瞳
悲しそうに不安げなのに
宝石みたいに澄んで綺麗な彼の瞳
だから面と向かっては言えなかった。
見つめられたら
離れる覚悟なんて一瞬で揺らいでしまうから
でも私じゃダメだって
あなたの隣は私じゃないって
思ってしまったんだ…
グクに向いていた皆の視線が
私の方に向いたのが分かった
公開痴話喧嘩みたいで凄く嫌なんだけど
話すしか選択肢のない私は
周りを見ないようにグクの目だけを見て
言葉を続けた
あの時…
彼と離れることを決めた数日前
彼が仕事で韓国を離れ
明日、帰国するっていう日
彼の熱愛記事が韓国中、いや…世界中に駆け巡った
望んでなくても勝手に目に入ってしまうほど
色んな分野で取り沙汰されて
最初こそ自分のことかとドキリとしたけど
記事にされてる写真に写るのは
韓国じゃない場所にいるグクと
私じゃない女の人…
彼を信用してないわけじゃないし
彼が二股とかそんなことするような人じゃないって
私が一番よく分かってる
だけど…
だけどね…
その写真の2人がお似合い過ぎて…
例えばグクの隣にいるのが私で
それが今回みたいな記事になったりなんかしたら
全然グクの隣が似合わない私が
グクの大事なものを失わせてしまうかと思うと
答えは1つしかないと思った
今、私が立つこの場所には
あの記事にグクと一緒に載っていた
彼にお似合いの女優さんがいる
あの時から時間が経って
今は本当に恋人同士なのかもしれないと思った
だって 事実、私の視界に入る女優さんの視線が
鋭く突き刺さって痛い程だ
そりゃあそうだろう
2人が付き合っているとしたら
グクが私に巻き付いているのは
あってはならないこと
そうでないとしても
そうなったら良いと思ったから
離れたのだ
明らかに女優さんはグクに好意を寄せている
だから私はちゃんと言わなきゃ…
さっきよりも困惑してるグクの瞳
声のトーンもぐんと下がって
冷ややかさを感じる
怒ってる?
やっぱり軽蔑するよね…
だってアナタのためって言いながら
自分勝手だってことくらい分かってた
でも、そうでも言わなきゃ
決心なんてつかなかったんだもの…
この場の雰囲気に似合わず
甲高い猫なで声でグクに触れた女優さん
予想通り好意を寄せているようだけど
"ジョングクさん" と呼んでいるあたり
恋人同士ではないんだなと想像がついて
言葉とは裏腹にホッとしている自分に気づく
そして 女優さんがグクに触れてることに
チクリと胸が痛む
私って本当に欲張りで自分勝手だな…
自分に嫌気がさして俯きかけたその時
一瞬聞こえた凄く低い声
今までに聞いたことがないほど低い声
何て言ったかなんて聞き取れなかったけど
きっと凄く怒ってるのは分かった
俯きかけた視線をグクに戻した時
先ほど聞き取れなかった言葉を
グクがもう一度口にした
先ほどとは打って変わって
怒りを露にした大きな声
そして、彼の視線は真っ直ぐに私へ向いていた














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!