「ディナーでもいかがですか」とお誘いを受け、近場のレストランに入る。キラキラと輝くビルの群れを臨む窓辺の席に座った。
メニューを見てみたが、何が何だかわからないので彼が注文した物と同じ物を頼む。
料理の待ち時間、隼人さんは徐に口を開いた。
四葉のクローバー。
幼い時、家の近くの林に生い茂るクローバーの中を血眼になって探したっけ。
漸く見つけたそれを薬指に不器用ながらくくりつけてくれたあの人は__
隼人さんの声にふっと現実に戻される。目の前にはキラキラした料理とワイングラスが既に並んでいた。
こてん、と首を傾げる隼人さん。狡い、本当に狡い。
顔を赤くしていると、隼人さんが「あ」と声を漏らした。
恐る恐る差し出すと、骨ばった手が私を包み込んだ。暖かくて、どこか懐かしいような、そんな__
ふと、冷たい感触がする。視線を下ろした。
薬指に先程買ってもらった指輪が嵌っている。
したり顔の彼は満足そうに頷いて、私の手を離した。ありがとうございます、と呟いてみて冷たい指輪より彼の手が名残惜しい事に気づく。
……どうしちゃったんだ、私。
思いを紛らわすように、私は明るく努めながら口を開いた。
慌てる隼人さんの手を半ば強引に取って、指輪を嵌めた。骨ばっていると思っていたけれど、案外華奢な指をしている。
薬指の指輪は、眩いばかりに輝いていた。
彼はレストランには似つかわない豪快な笑い声を響かせた。ハッとなって思わず手を離す。
今日は頭が回っていない。二日酔いか、彼の貸してくれたシャツのせいか、それともこの指輪のせいか、何かのせいにしてしまいたいと思っている私のせいなことは明瞭だった。
思わず俯いていると、隼人さんの手がこちらに伸びてきてするりと私の手を掬った。
白くて大きくて、優しい手。矢張りいつかどこかで__
その慈愛によく似た表情に、心臓が飛び跳ねる。此方を見据える琥珀色の瞳は変わらず微笑を湛えていた。
平静を保ちつつそう呟く。彼は少し驚いた顔をした後、ぷはっと笑って、また元の微笑みに戻っていく。
彼のその言葉の真意を確かめようと口を開くと、からは矢継ぎ早に「頂きましょう」とディナーを指し示した、












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。