放課後の裏庭。
夕陽が校舎の影を長く伸ばす時間。
渚はいつものように筋トレをしていた。
腕立てをしていると、後ろから小さな足音が近づいてくる。
「……渚、少し……話、いい?」
渚は腕立てを止め、汗を拭きながら振り返った。
そこには、黒髪が風に揺れる紬が立っていた。
いつもより少し顔色が赤い。
「紬さん…どうしたんですか?」
紬は少し躊躇ったあと、手元の鞄の紐をぎゅっと握る。
「……昨日、手を握られたとき……少しだけ平気だったんだ。」
渚は穏やかに笑う。
「はい。分かりますよ。」
「でも……そのあと、なんか、心臓がドキドキして……変な感じだった。」
紬の声は小さくて、少し震えていた。
でも、それがいつもより素直な印象を与えた。
「……ドキドキ?」
「……やっぱりなんでもない!」
言いながらも、紬の頬は赤く染まっている。
渚はそれを見逃さず、少しだけ近づいた。
「変じゃないです。そういう気持ちは自然なことですよ。」
紬は一瞬、渚の目を見る。
そして、目をそらして小さくつぶやいた。
「……ありがとう、渚。」
その声に、渚の胸がぎゅっと熱くなる。
「……紬さん?」
紬は少し顔を上げ、渚をじっと見つめる。
視線を合わせたまま、ほんの小さく息を吸って——
「……私……渚のこと……好きかも。」
その一言に、空気が一瞬止まったような感覚があった。
夕陽に染まった裏庭の中で、二人の世界だけが静かに動いた。
渚は驚きつつも、にっこり笑う。
「……俺も、紬さんのこと、ずっと好きでした。」
紬の目がぱっと大きく開く。
赤く染まった頬に、ほんの少し笑みが混ざった。
「っ!……ばか」
でも、その声は怒りではなく、照れと嬉しさが混ざった声。
紬は渚に少し近づき、そっと肩を寄せる。
渚はその距離感を大切にしながら、紬の背中に手を添えた。
お互いを強く意識しながらも、まだ少し照れる二人。
「……これからも、そばにいてもいいですか?」
渚の声に、紬は小さく頷く。
「……うん。よろしく……」












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。