ふいに横…というより、足元の方から声がして見下ろすと、そこには見たことのある赤い猫妖怪がいた。剣豪紅丸へ身を乗り出して、2本の尻尾の先にあるエメラルドの火の玉が揺れる。
ジバニャンが振り返って片手をビシッと上げる。
今度はジバニャンとは反対側の斜め上の方から声がした。
大きな槍を持ち、フサフサの白髪に褐色肌のソイツは、にやりとこちらを見て笑っていた。
そう言うと、白虎はズカズカと俺の前に出た。
2匹の妖怪が俺を庇うように前に出て立ちはだかる。
目の前に急に煙が立ち込めだし、紅丸と俺達3人の間を濃い霧が遮る。だんだん紅丸の姿が見えなくなっていく。
そう言うと、紅丸はコツコツとスニーカーの底を地につけて足音を鳴らしながら、霧の向こうに消えていった。
横になって寝そべっていた体を起こし、座ったまま高速で後退りする。
臼見沢先生がのけぞったかと思うと、その場に三角座りでしゃがみ込み、どんよりと落ち込む。
臼見沢先生が右手を顎に添えてなにやら考えているような仕草をする。
臼見沢先生が人差し指で地面に丸を書いた途端、サークルのようなものが出てくる。俺はその上に臼見沢先生と共に乗った。ぱちんと先生が指を鳴らすと、サークルがキラキラと光りだした。
剣豪紅丸の爪痕を見つめながら、さっき言っていた彼の言葉を思い出す。
『お前達が思っている以上に、事は膨大であり複雑だ』
今回のIKUSAは何かとんでもないことが起きるかもしれない。猫の直感か、俺はそう思った。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!