第12話

真相
120
2025/07/08 06:13 更新
臼見沢ハルヒコ
臼見沢ハルヒコ
着きましたよ、あなたくん
(なまえ)
あなた
……ん?
急に眩しい光に包まれたかと思ったら、今度は目を開けると居間のような場所に来ていた。しかし、畳や木造の壁も傷だらけで、どこか一風変わった異様な雰囲気を漂わせていた。
(なまえ)
あなた
ここは…?
臼見沢ハルヒコ
臼見沢ハルヒコ
旧生徒会室でウィス。
十数年前まではこの部屋で、
生徒会が活動しておりました
臼見沢ハルヒコ
臼見沢ハルヒコ
現在は、以前の栄光や権威を失った生徒会は追いやられ、廃墟化しています
そう言って、臼見沢先生が目の前の大きな襖を、ガラリと重たそうに開く。
臼見沢ハルヒコ
臼見沢ハルヒコ
あなたくん、あそこにある傷が見えますか?
そう言われ、襖の先にある部屋の中を覗き込む。
その部屋の一番奥の壁には、猫が付けたような引っかき傷や剣で斬られたような燃え跡がいくつもあった。
そして、その傷に俺は見覚えがあった。真新しい記憶を遡り、ふと剣豪紅丸を思い出す。
臼見沢ハルヒコ
臼見沢ハルヒコ
気づいたようですねぇ。
この傷は、Y学園の全盛期を支えた生徒会長・寺刃ジンペイが、変身して剣豪紅丸になって戦った時に付けた傷でウィス
臼見沢ハルヒコ
臼見沢ハルヒコ
その時戦った怪異が、当時Y学園にいた怪異の中の、最後の一体でした。
臼見沢ハルヒコ
臼見沢ハルヒコ
この傷は、Y学園が完全な平和を取り戻した瞬間を象徴する神聖な傷として、この部屋を使うことがなくなった今なお、こうして残っています
(なまえ)
あなた
そっか、父さんが…
次の瞬間、俺が来ていた猫又モチーフのパーカーが光だす。
臼見沢ハルヒコ
臼見沢ハルヒコ
ああ、そうでしたね。
その妖具ふくも…お父上の形見でしたね
臼見沢ハルヒコ
臼見沢ハルヒコ
傷と近づいたことで
共鳴し合っているのでしょう
続いて壁にある1つの一際大きな傷も光だす。何か懐かしい感じがして、そちらへ一歩二歩と歩み寄る。
臼見沢ハルヒコ
臼見沢ハルヒコ
さあ、参りましょう…過去の記憶の中へ
左手を差し伸べ、傷に触れる。
すると、そこからさらにまばゆい光が出てきて、あたりが再び真っ白に包まれる。
(なまえ)
あなた
っ…!




臼見沢ハルヒコ
臼見沢ハルヒコ
……あなたくん、君は
どちらに堕ちるのでしょうね
(なまえ)
あなた
……また、ワープした?
(なまえ)
あなた
ていうか、ここってもしかして…
目の前には、昔父さんと住んでいた家があった。
母さんが再婚して別の家に住むことになる前の家だ。
5歳の主人公
おとーさーん!
ラップしてないで早く魚屋行こうよー!
すぐ横のドアから、小さい背丈の子供が出てくる。
ちょっと癖っ毛の真っ黒な髪に、お気に入りのTシャツとブーツを着ている。

小さい頃の俺だった。
???
まあ待てってあなた!
今ノッてきたところだから…
5歳の主人公
もー!早く出なさーい!
5歳の俺が玄関からグイグイと誰かを引っ張って出てくる。家の中からあらわになったのは、忘れるはずもない、死んだ父さんだった。
(なまえ)
あなた
は、え…え!?父さん!?
(なまえ)
あなた
ちょ、待っ…!
父さんに触れようとするが、差し伸べた手はスカッと透けて空振ってしまう。
(なまえ)
あなた
え、何で…
5歳の主人公
お父さん、今日の夕ごはん何ー?
ジンペイ
んー、今日はあなたの5歳の誕生日だし、鮭のムニエルとかやってみようかなぁ
ジンペイ
あと帰りのスーパーで
チョコボーたっくさん買おう!
5歳の主人公
やったー!!
(なまえ)
あなた
いや、この会話、はっきり覚えがある…
(なまえ)
あなた
たしか、この後に父さんは…
てことは、ここが過去の記憶の中…?
(なまえ)
あなた
そっか、記憶だから
父さん達に触れないんだ
剣豪紅丸
剣豪紅丸
その通りでござる
急に後ろから声をかけられる。
(なまえ)
あなた
え、誰…って剣豪紅丸!?
剣豪紅丸
剣豪紅丸
いかにも、ただし拙者は
ジンペイ殿が変身した真の紅丸だ
剣豪紅丸
剣豪紅丸
まあ、所詮記憶の中に残る幻…
いずれ消えゆく存在だがな
剣豪紅丸
剣豪紅丸
拙者の傷に触れて、
この記憶の中に入ってきたのだろう?
すべての真実を知るために
剣豪紅丸
剣豪紅丸
聞かずともわかる。
とうに覚悟はできておろう
剣豪紅丸
剣豪紅丸
それならば、拙者はただお主に
伝え受け継ぐのみである
剣豪紅丸
剣豪紅丸
おお、来たぞ、「あの時」が
剣豪紅丸が指を指す方を見ると、いつの間にかあの交差点に来ていた。俺と父さんが手を繋いで横断歩道を渡るために信号待ちをしている。
すると、1台のトラックが向こうから来ていた。
その瞬間、トラックが黒いモヤに包まれ、2人の方に全速力で向かってくる。トラックに死神が取り憑いたのだ。
ジンペイ
……!あれは…!
父さんがいち早くトラックに気づき、俺の手を引いて逃げようとする。
しかし…、その瞬間信号が青に変わってしまった。
目の前には、大好きな魚屋さん。
小さい俺は父さんの手を離し、真っ直ぐ1人で駆け出した。すると、急にトラックが父さんの方に行くのをやめ、急に方向転換して俺の方に走ってくる。
(なまえ)
あなた
え…
剣豪紅丸
剣豪紅丸
どうした、あなた殿
(なまえ)
あなた
……これじゃない、俺の記憶では、父さんと一緒に横断歩道を渡っている最中で…
(なまえ)
あなた
え…何で…?
何で俺だけが、横断歩道に出てんの…?
その瞬間、ズキンと俺の頭に痛みが走る。
俺は片手で頭を抱え、めまいに襲われそうになった。
ジンペイ
……まさか、あなた狙い!?
呪いの発動があまりに早すぎる…!
ジンペイ
っ…理由を考えるのは後だ!
父さんが猫のようにしなやかな低い姿勢で、小さい俺の方に素早く走ってくる。
ジンペイ
あなた!
父さんが小さな俺を突き飛ばす。身体が軽い俺は高く宙を舞った。その刹那、父さんのすぐ目の前に、すでにトラックが来ていた。
ジンペイ
あ…駄目だ、これ
ボンッと鈍い音がした後、あたりに人々の悲鳴が聞こえ始める。ある人はショックで気絶する人、またある人は救急車を呼ぼうとする人、そして、小さい俺は…。
5歳の主人公
……………………………お、とう、さん?
5歳の主人公
え、何…何で、どうしたの?
5歳の主人公
……あぁ、わかった
またギャグか、何か…でしょ?
5歳の主人公
……………お父さん……?
俺はその光景を見て、唇を血が出るまで噛み締め、涙目の小さい俺の方へ走っていった。そして、胸ぐらを掴もうと手を伸ばすが、案の定何も掴めなかった。
やるせなさと悲しさで胸が張り裂けそうになり、俺はその幼い子どもに怒鳴るように大声で言った。
(なまえ)
あなた
全部…全部、お前のせいじゃないか!
(なまえ)
あなた
お前が不用意に、何も見ずに、道路に飛び出して…お前を庇って父さんは…父さんはっ…!
剣豪紅丸
剣豪紅丸
あなた殿…
(なまえ)
あなた
父さんを…父さんを返せよ!!
叫び疲れて、ハァハァと息を荒くして、俺はその場にへたり込む。
(なまえ)
あなた
……ごめん、父さん。
父さんは…俺のせいで死んじゃったんだな
剣豪紅丸
剣豪紅丸
そんな事ないでござる…全ては「死神の呪い」のせい。あなた殿は何も悪くないでござるよ
(なまえ)
あなた
父さんが俺を庇いさえしなければ、今でも生きてたんだよ…。俺だけ1人残されたって…意味ないじゃん…
俺はその場にうずくまったまま、拳を握りしめて道路にぶつける。地面の上に、ポタポタと雫が落ちた。
しかし次の瞬間、小さい俺の上半身が光だし、みるみるうちにそれが形を成していく。輝くのが収まった後、小さい俺は白いパーカーを着ていた。フードは降ろされ、髪の部分があらわになっている。しかし、その真っ黒な髪は瞬く間に赤色に変わり果て、猫耳のような形のくせ毛ができた。
小さい俺は、そのままバタリとその場に倒れ、気絶してしまった。
(なまえ)
あなた
……これって……?
剣豪紅丸
剣豪紅丸
む?これも記憶にないでござるか?
剣豪紅丸
剣豪紅丸
あれを見るでござる
紅丸が父さんの方を指さし、そちらの方を見る。
すると、何ということだろうか。父さんの髪の毛が、赤色から茶髪に変わっていた。
剣豪紅丸
剣豪紅丸
つまり、説明しますると!
剣豪紅丸
剣豪紅丸
ジンペイ殿の中に宿っていたある妖怪の魂が、あなた殿の魂と融合し、あのように真っ黒髪から赤くなったのでござる!
剣豪紅丸
剣豪紅丸
何故あなた殿が2つの妖怪の魂を持っているのか、不思議に思ったことはござらなかったか?
(なまえ)
あなた
……まさか
(なまえ)
あなた
元々剣武魔神・白虎だけの魂だった俺の中に、さらにお父さんの魂である妖怪の…ジバニャンが入ってきたことで、2つの魂が合わさったってこと?
剣豪紅丸
剣豪紅丸
いかにも!
剣豪紅丸
剣豪紅丸
今着ているお主のパーカーも、死に際にジンペイ殿が預けた妖具…形見のようなものなのでござる
(なまえ)
あなた
そうだったんだ。でも、どうして…
剣豪紅丸
剣豪紅丸
……ジンペイ殿が、あなた殿を1人にさせないために、最後のYSPを振り絞ってこのような事をしたのではござらぬか?
剣豪紅丸
剣豪紅丸
ジンペイ殿は、いついかなる時でも、最期までも他者を優先する。自分のことなど後回し。そういうお方なのだ。
(なまえ)
あなた
……ただ自己犠牲が強いだけじゃん
剣豪紅丸
剣豪紅丸
ああ、そうであるな。だが…
剣豪紅丸
剣豪紅丸
そんな奴が、見事英雄になったのでござる
剣豪紅丸
剣豪紅丸
それに、ジンペイ殿があの時どうしようが、お主は1人ではない。
剣豪紅丸
剣豪紅丸
大切な仲間にも恵まれただろう
剣豪紅丸
剣豪紅丸
それに、まだお前にはエマ殿がいるからな!
(なまえ)
あなた
…………………………………ん?
剣豪紅丸
剣豪紅丸
ん?
(なまえ)
あなた
え、何でエマ学園長がそこで出てくる?
いや、そりゃあいつも生徒会活動で
お世話になってるけど
剣豪紅丸
剣豪紅丸
え、いやほらだって、唯一の家族であろう?
(なまえ)
あなた
…………………………………んん?
剣豪紅丸
剣豪紅丸
んん?
(なまえ)
あなた
え、それってどういう…
剣豪紅丸
剣豪紅丸
いやだから、母親だろ?お主の
(なまえ)
あなた
……………………………え、
(なまえ)
あなた
えぇぇぇぇぇぇ!?

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