急に眩しい光に包まれたかと思ったら、今度は目を開けると居間のような場所に来ていた。しかし、畳や木造の壁も傷だらけで、どこか一風変わった異様な雰囲気を漂わせていた。
そう言って、臼見沢先生が目の前の大きな襖を、ガラリと重たそうに開く。
そう言われ、襖の先にある部屋の中を覗き込む。
その部屋の一番奥の壁には、猫が付けたような引っかき傷や剣で斬られたような燃え跡がいくつもあった。
そして、その傷に俺は見覚えがあった。真新しい記憶を遡り、ふと剣豪紅丸を思い出す。
次の瞬間、俺が来ていた猫又モチーフのパーカーが光だす。
続いて壁にある1つの一際大きな傷も光だす。何か懐かしい感じがして、そちらへ一歩二歩と歩み寄る。
左手を差し伸べ、傷に触れる。
すると、そこからさらにまばゆい光が出てきて、あたりが再び真っ白に包まれる。
目の前には、昔父さんと住んでいた家があった。
母さんが再婚して別の家に住むことになる前の家だ。
すぐ横のドアから、小さい背丈の子供が出てくる。
ちょっと癖っ毛の真っ黒な髪に、お気に入りのTシャツとブーツを着ている。
小さい頃の俺だった。
5歳の俺が玄関からグイグイと誰かを引っ張って出てくる。家の中からあらわになったのは、忘れるはずもない、死んだ父さんだった。
父さんに触れようとするが、差し伸べた手はスカッと透けて空振ってしまう。
急に後ろから声をかけられる。
剣豪紅丸が指を指す方を見ると、いつの間にかあの交差点に来ていた。俺と父さんが手を繋いで横断歩道を渡るために信号待ちをしている。
すると、1台のトラックが向こうから来ていた。
その瞬間、トラックが黒いモヤに包まれ、2人の方に全速力で向かってくる。トラックに死神が取り憑いたのだ。
父さんがいち早くトラックに気づき、俺の手を引いて逃げようとする。
しかし…、その瞬間信号が青に変わってしまった。
目の前には、大好きな魚屋さん。
小さい俺は父さんの手を離し、真っ直ぐ1人で駆け出した。すると、急にトラックが父さんの方に行くのをやめ、急に方向転換して俺の方に走ってくる。
その瞬間、ズキンと俺の頭に痛みが走る。
俺は片手で頭を抱え、めまいに襲われそうになった。
父さんが猫のようにしなやかな低い姿勢で、小さい俺の方に素早く走ってくる。
父さんが小さな俺を突き飛ばす。身体が軽い俺は高く宙を舞った。その刹那、父さんのすぐ目の前に、すでにトラックが来ていた。
ボンッと鈍い音がした後、あたりに人々の悲鳴が聞こえ始める。ある人はショックで気絶する人、またある人は救急車を呼ぼうとする人、そして、小さい俺は…。
俺はその光景を見て、唇を血が出るまで噛み締め、涙目の小さい俺の方へ走っていった。そして、胸ぐらを掴もうと手を伸ばすが、案の定何も掴めなかった。
やるせなさと悲しさで胸が張り裂けそうになり、俺はその幼い子どもに怒鳴るように大声で言った。
叫び疲れて、ハァハァと息を荒くして、俺はその場にへたり込む。
俺はその場にうずくまったまま、拳を握りしめて道路にぶつける。地面の上に、ポタポタと雫が落ちた。
しかし次の瞬間、小さい俺の上半身が光だし、みるみるうちにそれが形を成していく。輝くのが収まった後、小さい俺は白いパーカーを着ていた。フードは降ろされ、髪の部分があらわになっている。しかし、その真っ黒な髪は瞬く間に赤色に変わり果て、猫耳のような形のくせ毛ができた。
小さい俺は、そのままバタリとその場に倒れ、気絶してしまった。
紅丸が父さんの方を指さし、そちらの方を見る。
すると、何ということだろうか。父さんの髪の毛が、赤色から茶髪に変わっていた。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。