第8話

七日目
609
2025/02/24 01:55 更新
〇月✕日 七日目
初めて見つけたんだ
似たような悩みの子
何人目かに会ったんだ
ボクの大切な人
その日は、いつもより遅くに屋上に来ていたんだ
ここから見える夜景は、いつもは見られない、見ようとも思わなかった
ボクにとって、最初で最期の景色
……………の、はずだった
ガチャ
扉を開けると、肌寒い夜風がボクの身を包む
『このまま夜闇に身を投げ出してしまおうか』
不思議と、ボクはそう思ってしまった
でも……キミがいたから……ボクは今日“も”死ねなかった
今にも消えてしまいそうなほど、儚げな背をボクに向けてさ
キミは__神代類大切な人は、屋上のフェンスに寄りかかってたよね
















































瑞希
瑞希
___類
ボクは少し溜めて名前を呼ぶ
類は、何も言葉を発さずにボクの方を向いた
瑞希
瑞希
………類だけはここに来て欲しくなかったなぁ
ボクがそう言うと、類は下を向く
そしてそのまま____
類
………ごめんね、瑞希
……と、それだけ呟く
たったそれだけの言葉なのに、ボクの心臓はドクドクと鼓動する
これはきっと、恋などの鼓動ではない
そう証明するかのように、ボクの頬に一雫の汗が垂れる

頭がくらくらする、目の前が暗くなる、体の感覚がなくなる
吐き気がする、涙が溢れる、耳鳴りがする、悪寒がする
先程とは比べられないほど尋常じゃない汗が垂れてくる
足の感覚がなくなり、立ってられなくなり、しゃがみ込む
そのまま“何か”に耐えられなくなり、地面に倒れる

最後に見た景色は……なんだっけな
類が……屋上から飛び降りようと、フェンスの外に出ているところだっけな
あはは……結局は、こうなんだ
ボクは誰も救えない、結局は………”最期”は
“大切な人”が、目の前で自殺するのをみるだけなんだ
きっと__これがこの物語の“成功”なんだ
なら……ボクはその“成功”に逆らうことなんて____









































































  __あの時、瑞希が背中を押してくれなければ__
 __“成功”に導けていなかったかもしれないからね__








































































___違う
これは類が望んだ……みんな自殺願望者が望んだ“成功”なんかじゃない
こんなのは“成功”なんてものじゃない

誰が目の前で大切な人が死ぬのを“成功”という?
誰が誰も救えないで“最期”を迎えるのを“成功”という?
誰が世界人生に負けて自殺するのを“成功”という?

誰も言わないだろ……誰がそんな“失敗諦めること”を“成功努力すること”という!!
…………こんなもんじゃない
ボクの”成功”はこんなところじゃ終われないっ!!
ボクの”成功”はッ!みんな前を向く者の“成功”はこんなものじゃないッ!

起き上がれ……起き上がれッ!!
言うことを聞けッ!!ボクの身体ッ!!
瑞希
瑞希
ッ……!!類ッ!!
ボクが類に大声で呼びかけても、類は止まるどころか、靴を脱いで律儀にかかとを揃えている
しかし、ふと風に吹かれて髪の隙間から見えた顔は、苦しそうに歪んでいた
あの様子ならッ……まだ止められるッ
”失敗”してしまった類を“成功”に導くことができるッ!!
あの時のように、ボクはまたッ…!!類を……類をッ!!
背中を押して、“成功”に導くんだッ!!
瑞希
瑞希
ねぇ……類ッ………!!






















































          “やめてよッ…………”






































































類
ッ……!!み…瑞希…?
自分でも驚くほど弱い声が出た
類もとても驚いているようだ
そんな類や“ボク”に、ボクは続けて話す
瑞希
瑞希
ボクはッ……もしかしたらッ…!!
類の全てを理解できてないのかも知れないッ!
瑞希
瑞希
でも……でもッ……!!
瑞希
瑞希
ここ屋上からは消えてよッ!!”
瑞希
瑞希
ボクを見ているとッ……苦しいんだッ!!
ボクは瞳から涙をボロボロと零しながら泣き叫ぶ
類には死んでほしくない、自殺してほしくない
だからこそ、普段より強く言ったんだ
ちゃんと、類の背中を押せるように
ちゃんと___類の“世界人生”を“成功”に導けるように
類
瑞希………わかったよ
類
そこまで瑞希が僕のことを思ってくれていただなんて……ふふっ、なんだか心が温かいよッ
類
__ありがとう、瑞希
そう言うと、類は少し泣きながら、ようやくフェンスの向こう側から遠のいて、こちら側に来てくれた
しっかりと、脱いだ靴も履いて








__少し経ち、類は屋上から出ていった
その時の空の光は、少しばかりボクの身体を照らしていた
ボクは、そんな類をずっと見ていた
どんな顔で、どんな気持ちで見ていたのかは……ボクも分からないし、覚えてすらいない
でも……なんでだろうなッ………









瑞希
瑞希
ボク自身の気持ちは……誰にも言えないのかなッ…?

プリ小説オーディオドラマ