近所で1番高い山へ今から登山する。時刻は推測5時か6時くらいだろう。
自分らが住んでるところは、山の麓に街があるから、案外この時間からでも行けなくはない。
まあそれでも1時間は掛かりますけどね....
山道を歩いて20分くらいだろうか。
上りが段々と急になって、脚がもつれそうだ。
これが、最後のミッション。
達成できなきゃ、全てが水の泡だ。
なんとしてでも、あの山に登らなきゃ。
耳を澄ませば、確かに街の方が騒がしい。
もしかしたら、もうバレたのかな。
そりゃそっか、わかりやすすぎるし。
逆にここまで耐えた方が素晴らしい。
世間の人は、まだ知らない。
そう、まだ。
もしこれが、世に放たれたら、皆はどう思うのだろうか。
凄惨な事件として風化せず、語り継がれるのか。
小さい記事に載るだけで、一部が知るのか。
それは、僕たちが知る由もないが、結末はどう迎えるのか少し気になる。
ふと、彼女が呟く。
不幸、その言葉を聴いた瞬間、すぐに疑問が浮かんだ。
そもそも不幸の定義はなんだ?
幸せじゃないから不幸なのか?
満足してないから不幸なのか?
誰かより劣ってるから不幸なのか?
それとも才あるから不幸なのか?
こんなにも選択があるのに、それを一括で不幸と呼ぶのか。
幸太にも言われたあの言葉が脳裏をよぎる。
"本当に幸せなのか?"
一般的には、これは不幸なのかもしれない。
でもそれじゃあ、楓といた日々全てを否定して幸せじゃなかった。
こっちの方が、余程不幸だろ?
僕らは、"不幸を希望"にしなきゃダメなんだ。
どの道を進んだって、後悔したって、
自分が正解だと思わなきゃ、進むことも止まることもできない。
昨日の夜、楓と話したあの言葉。
時間が経つにつれ、段々と重みに潰されそうになる。
メインディッシュも、デザートも終わった。
残りの会計は、私たちの、
命で払おうか。
あの時は、とても困惑したが、今じゃ納得できる。
国から罰せられるのは、とても苦痛だ。
最期の選択くらい、自分たちで決めさせてくれ。
そう。
『バレる前に死ぬだけ。』














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。