黄 side
目が覚めた 。 黒猫のぬいぐるみを手で手繰り寄せる 。
喉の違和感 。 そういえば 、 発作でたんやっけ … 。
いるませんせぇが助けに来てくれた所まではなんとなく覚えている 。
せんせぇいつも俺ん事助けてくれるなあ … 。 やさしい …
前世でどんな徳積んだらいるませんせいみたいな人に助けてもらえるのだろうか 。
でも 、前世でいいことしてたらきっと俺 、 こんな病気なってへんよな
ずっと元気でお母さんお父さん 、ハルと過ごせたんやろうし
やっぱ 、 悪いことしたのかなあ …
今日はまだすちくんに出会ってない 。
話し声は 、 カーテン越しに聞こえたし 、
発作起こした時にらんらんがカーテン開けてくれてすぐ声をかけてくれたような気がするけれど 。
出会ったって感じじゃないような …
前世でもこんな大事な時に迷惑掛けていたのだろうか 。
だから 、 こんな病気になったのかな 。
ほんなら 、 来世はもっと重い病気になって産まれてくるかも 。
ベッドの上で1人本を読んでいたら 、 なんだか病室がざわざわし始めた 。
耳を澄ませば 、 らんらんとこさめちゃんとすっちーがおしゃべりをしているようだった 。
涙ぐんだ声が聞こえる 。 でも 、 悲しい涙じゃなさそうだ 。
それなら良かった 。 俺のせいで〜〜だった ! とか言われたら怖くてもう顔見られない 。
俺が会話に混ざっても大丈夫かな ? なんて考えるが 、 やっぱりすちくんに会いたい欲がだんだん強くなり 、
カーテンをそっと開いた 。
恐る恐る声をかけると一瞬ぽかんとした顔の3人が次の瞬間には嬉しいような心配のような顔で声をかけてくる 。
皆が 、 ベッドから俺の方まで移動してきてあわあわしてしまう 。
なんだかいっつも慣れなくて 、 照れくさい 。
でもそれと同時に安心した 。
みんなは本当に優しい 。
だからこそ 、 迷惑をかけれない 。
次に迷惑をかけたら今度こそ俺は 、 悪い子になってしまうから 。
なのに頼ってしまう 。
なんでかは 、 分からない 。
みんなが心配してくれた 。
迷惑なんかじゃないって思ってくれていた 。
みんなが笑っていた 。
俺も笑った 。
でも急になんだかふと笑えなくなって
ぼ ー っと 考え事をしてしまう 。
先生も忙しいのになあって 。
こんなおれのためになんで頑張ってくれるんだろうって 。
心配で 、 不安で 、 でも俺に向き合ってくれたのが嬉しくて 。
どうしようもないような 、 そんな気持ち 。
その気持ちを言葉にするか迷った 。
言ってしまったら 、先生たちが俺の事本当はどう思っているのかわかってしまいそうだったから 。
思わず俯いた 。
こさめちゃんは心配そうに顔を覗き込んできた 。
すちくんとらんらんはそっと俺の隣に腰掛ける 。
その視線から逃れることなんて不可能で 、
ついついぽろっと言葉を零してしまった 。
ぼろぼろと溢れる言葉は紡がれて 、 長く長く結ばれていく 。
みんなはうん 、 と頷きながら黙って聞いていた 。
怖い 。 嫌われていたと思うと 、 手足が震える 。
でも本当にそうかなんて分からなくて 、 迷惑でどうしようって 。
でも 、 でも 。
やっぱり本当は 、
全ての気持ちを言い切って 、 帰ってきた言葉は予想外のものだった 。
みんなが 、 同じことを考えていた 。
びっくりして 、 思わず顔を上げる 。
ちょうど俺の顔を覗き込んだすちくんと目が合った 。
彼はにこっと優しく笑った 。
頭にハテナを浮かべる俺を他所にすちくんはにこにこ顔で自分の引出しを開ける 。
そこからスケッチブックを取りだして 、 あるページを切り取った 。
そう言って 、 俺に切り取った紙を手渡してくる 。
それを受け取り 、 なんだろうと思いながら紙を覗き込む 。
そこには 、 1匹の黒猫の絵が書かれていた 。
これってもしかして …
スケッチブックに描かれた可愛い黒猫の絵 。
それは 、 俺の家で飼っている「 ハル 」という名前の猫だった 。
家でもろくに触れ合うことはできないけれど 、 窓ガラス越しに擦り寄ってくるその猫が俺は大好きだった 。
すちくんがそう言う 。
顔は優しく笑っていた 。
本当に嬉しい 。
こんな気持ちを伝え方は 、 真っ直ぐに感情が伝わる 。
単なる言葉だけじゃなくて 、絵や手紙で普段言いずらいことも言えたりするものだ 。
俺は急いで立ち上がる 。
周りは「 そんな急に立ち上がらないで 、 怖いから ! 」なんて言っていたが
そんなことは気にせずに自分の引き出しを開ける 。
俺は綺麗なおりがみを取り出して 、 にっこり笑うのだった 。
10/5 タイトルを「✿︎ きもちがひろがる」に変更しました












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。