第7話

第七話 『強いままでは、立っていられなかった』
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2025/12/27 03:00 更新

怪獣討伐完了。

警報が止まり、
校庭に、ようやく静けさが戻った。

瓦礫の間を縫うように、
あなたの下の名前は歩いていた。
(なまえ)
あなた
怪我してない?
(なまえ)
あなた
立てる?無理しないで

一人ひとり、生徒の顔を見る。
泣いている子。
呆然としている子。
(なまえ)
あなた
大丈夫。もう終わったから。

その声は、
戦場で剣を振るった隊員のものではなく――
同じ学校に通う、15歳の少女の声だった。

教師たちが駆け寄り、
医療班が到着する。
先生
鳴海さん……いや……鳴海隊員、本当にありがとう
先生
あなたがいなかったら……

あなたの下の名前は、首を振る。
(なまえ)
あなた
私は、防衛隊員だから。普通のことです

そう言って、
一度だけ、後ろを振り返った。

そこに――
父がいることを、確認してから。


---

一方、その頃。

保科宗四郎は、
校庭の端に立つ鳴海弦のもとへ歩いていた。
保科宗四郎
保科宗四郎
……鳴海さん

呼びかけると、
鳴海は、わずかに肩を揺らした。
鳴海弦
鳴海弦
……あなたの下の名前は?

第一声が、それだった。
保科宗四郎
保科宗四郎
今、生徒らの確認してる。怪我人おらんか、走り回っとるわ
鳴海弦
鳴海弦
そうか

その返事は、
ひどく軽かった。

保科は、
その違和感に気づいた。
保科宗四郎
保科宗四郎
……鳴海さん?

次の瞬間。
鳴海弦
鳴海弦
……っ

鳴海が、
片膝をついた。
保科宗四郎
保科宗四郎
おいーー!

保科が駆け寄る。

鳴海は、口元を押さえた。

その指の隙間から――
赤黒い血が、滴り落ちた。
鳴海弦
鳴海弦
……っ、ぐ……
保科宗四郎
保科宗四郎
……最初から、か……

保科の声が、低くなる。

鳴海は、
笑おうとした。
鳴海弦
鳴海弦
……バレたか
保科宗四郎
保科宗四郎
当たり前やろ!!あんだけ無茶して……!!

鳴海は、
視線を上げる。

あなたの下の名前が、生徒に声をかけている方向を見る。
鳴海弦
鳴海弦
……アイツの前では、強い父さんでありたい

それだけ、言った。

次の瞬間。
鳴海弦
鳴海弦
……っ!!

鳴海は、
堪えていた血を、すべて吐き出した。

保科が、すぐに受け止める。
保科宗四郎
保科宗四郎
鳴海!!

力が、抜ける。

重たい体が、
保科の腕に崩れ落ちた。


---
保科宗四郎
保科宗四郎
あぁ、ほんまに……

保科は、歯を食いしばる。
保科宗四郎
保科宗四郎
お前……“一番信頼できる奴の前”まで、我慢しよったんか

鳴海は、
意識が遠のきながらも、
小さく笑った。
鳴海弦
鳴海弦
……保科
保科宗四郎
保科宗四郎
喋るな
鳴海弦
鳴海弦
……あなたの下の名前……

その名前だけは、
はっきりしていた。


---

その頃。

あなたの下の名前は、
最後の生徒を医療班に引き渡し、
深く息をついた。
(なまえ)
あなた
……よし

そして、
振り返る。
(なまえ)
あなた
……パパ?

そこに――
立っているはずの背中が、ない。

胸が、嫌な音を立てた。
(なまえ)
あなた
……え?

視線の先。

保科に抱えられ、
動かない鳴海弦。

白い隊服に、
赤が滲んでいる。
(なまえ)
あなた
ーーっ!!

あなたの下の名前は、
走り出した。


---

第七話・了

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