怪獣討伐完了。
警報が止まり、
校庭に、ようやく静けさが戻った。
瓦礫の間を縫うように、
あなたの下の名前は歩いていた。
一人ひとり、生徒の顔を見る。
泣いている子。
呆然としている子。
その声は、
戦場で剣を振るった隊員のものではなく――
同じ学校に通う、15歳の少女の声だった。
教師たちが駆け寄り、
医療班が到着する。
あなたの下の名前は、首を振る。
そう言って、
一度だけ、後ろを振り返った。
そこに――
父がいることを、確認してから。
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一方、その頃。
保科宗四郎は、
校庭の端に立つ鳴海弦のもとへ歩いていた。
呼びかけると、
鳴海は、わずかに肩を揺らした。
第一声が、それだった。
その返事は、
ひどく軽かった。
保科は、
その違和感に気づいた。
次の瞬間。
鳴海が、
片膝をついた。
保科が駆け寄る。
鳴海は、口元を押さえた。
その指の隙間から――
赤黒い血が、滴り落ちた。
保科の声が、低くなる。
鳴海は、
笑おうとした。
鳴海は、
視線を上げる。
あなたの下の名前が、生徒に声をかけている方向を見る。
それだけ、言った。
次の瞬間。
鳴海は、
堪えていた血を、すべて吐き出した。
保科が、すぐに受け止める。
力が、抜ける。
重たい体が、
保科の腕に崩れ落ちた。
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保科は、歯を食いしばる。
鳴海は、
意識が遠のきながらも、
小さく笑った。
その名前だけは、
はっきりしていた。
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その頃。
あなたの下の名前は、
最後の生徒を医療班に引き渡し、
深く息をついた。
そして、
振り返る。
そこに――
立っているはずの背中が、ない。
胸が、嫌な音を立てた。
視線の先。
保科に抱えられ、
動かない鳴海弦。
白い隊服に、
赤が滲んでいる。
あなたの下の名前は、
走り出した。
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第七話・了















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!