第6話

第六話 『その背中を、父と呼ぶ』
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2025/12/26 01:00 更新
――保科宗四郎 視点


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正直に言えば。

あの人が、ヘリから飛び降りた瞬間、
僕は一瞬、思考が止まった。
保科宗四郎
保科宗四郎
……ほんまに飛びよった……

隊長としても、
日本防衛隊最強クラスの男としても、
鳴海弦は“絶対にやらない選択”を選んだ。

だからこそ――
僕は分かった。
保科宗四郎
保科宗四郎
ああ……あれはもう……父親の背中や……


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地上。

砂塵の向こうに、
二つの影が並んで立っている。

鳴海弦と、鳴海あなたの下の名前。

剣を構える角度。
重心の置き方。
呼吸の間。

――そっくりや。
保科宗四郎
保科宗四郎
似すぎやろ……

思わず、呟く。

けど、決定的に違う。

あなたの下の名前ちゃんの剣は、
“守るために振るわれる剣”。

鳴海隊長の剣は、
“終わらせるための剣”。

その二つが、
今――同じ方向を向いている。


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怪獣が吠える。

次の瞬間、
二人が同時に踏み出した。

速い。
いや、速すぎる。
保科宗四郎
保科宗四郎
……あの子、ほんまに15か?

副隊長として、
何百人もの隊員を見てきた。

でも、
“親の背中を追う剣”を
ここまで研ぎ澄ませた子は、
見たことがない。

鳴海隊長は、叫ばない。
指示もしない。

ただ――
半歩前を走る。

それだけ。

あなたの下の名前ちゃんは、
迷わずその背中を追う。

それが、
どれほど信頼してないとできないことか。


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一瞬。

怪獣の尾が、
あなたの下の名前ちゃんを捉えかけた。
保科宗四郎
保科宗四郎
……っ!

僕は、声を上げかけた。

でも。

鳴海隊長が、
体ごと割り込んだ。

剣で受ける。
盾も、防具も、無視して。
保科宗四郎
保科宗四郎
……あほや

口ではそう言った。

でも、胸の奥が、
ひどく痛んだ。

あの人、
自分が斬られることより――
娘が斬られる可能性を
一切、考慮してない。


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鳴海弦
鳴海弦
あなたの下の名前!!

鳴海が、初めて名前を呼ぶ。

それは、
指示でも、命令でもない。
鳴海弦
鳴海弦
今だ!!

ただの――
父親の声や。

あなたの下の名前ちゃんが、
一瞬だけ、頷く。

霞双牙が、
空気を切り裂いた。

美しい剣筋。

無駄がない。
恐れがない。
保科宗四郎
保科宗四郎
……剣、継いどるな

鳴海の剣を、
そのまま“別の形”にしたような一太刀。

怪獣の核が、
真っ二つに割れる。


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静寂。

砂埃が、
ゆっくりと落ちる。

勝利。


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僕は、
気づいてしまった。

鳴海弦は、
あなたの下の名前ちゃんを
“最強の隊員”として育てたんやない。
保科宗四郎
保科宗四郎
……父親として、生き残らせるためやったんやな

無線越しに、
誰かが言う。
隊員A
〘……隊長、無茶しすぎです〙

僕は、苦笑した。
保科宗四郎
保科宗四郎
そらそうや

ヘリの中で、
誰にも聞こえんように、呟く。
保科宗四郎
保科宗四郎
でもな

視線の先には、
剣を下ろし、
小さく息をつくあなたの下の名前ちゃん。

その隣に立つ、鳴海弦。
保科宗四郎
保科宗四郎
今日あの人は、隊長になったんやなくて――

一拍。
保科宗四郎
保科宗四郎
父親になったんや


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地上。

鳴海隊長は、
あなたの下の名前ちゃんの肩に、そっと手を置く。

言葉は、ない。

それでも。

あなたの下の名前ちゃんは、
振り払わなかった。

その背中を見て、
僕は確信した。

この戦いで一番強かったのは――
剣でも、怪獣でもない。

**“守ると決めた男の覚悟”**や。


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第六話・了

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