第5話

第五話 『親バカ』
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2025/12/25 01:00 更新

霞双牙が、怪獣の装甲を裂く。

だが――
止まらない。
(なまえ)
あなた
……っ!

怪獣の巨体が、なお前へ出る。
あなたの下の名前は踏ん張るが、地面が抉れ、後退する。

押されている。
確実に。
(なまえ)
あなた
……!

背後には、校舎。
その上空には、防衛隊ヘリ。

逃げ場が、ない。
鳴海弦
鳴海弦
〘あなたの下の名前、下がれ!!〙

通信越しの鳴海の声。

でも、下がれない。
止める場所がない。

あなたの下の名前は歯を食いしばり、
怪獣の腕を受け止める。
(なまえ)
あなた
……っ、重……!

膝が、沈む。


---

上空。

防衛隊ヘリの中で、
鳴海弦は、その映像を見ていた。

モニターに映るのは、
怪獣に押し潰されそうになっている娘。
鳴海弦
鳴海弦
……

ヘリが揺れる。
保科宗四郎
保科宗四郎
鳴海隊長!距離を保て!!

保科宗四郎の声。
保科宗四郎
保科宗四郎
今降りたら、お前も巻き込まれるで!

鳴海は、返事をしなかった。

ハーネスを外す。
保科宗四郎
保科宗四郎
なぁ、鳴海さん!

保科が腕を掴む。
保科宗四郎
保科宗四郎
正気か!!隊長やぞ、お前は!!

鳴海は、初めて保科を見る。

その目には、
指揮官の冷静さはなかった。
鳴海弦
鳴海弦
……オカッパ

低い声。
鳴海弦
鳴海弦
僕はな

一拍。
鳴海弦
鳴海弦
お前が思ってるより、もっと……

鳴海は、扉に手をかける。
鳴海弦
鳴海弦
“親バカ”なんだよ
保科宗四郎
保科宗四郎
……っ!

保科の手が、わずかに緩む。

次の瞬間。

鳴海弦は、
何も言わずに飛び出した。


---

風が、全身を叩く。

高度。
速度。
危険。

全部、分かっている。

それでも、鳴海は落ちる。

視線の先には、
必死に耐えている小さな背中。
鳴海弦
鳴海弦
あなたの下の名前……!

初めて、
戦場で娘の名前を叫んだ。


---

地上。

怪獣の圧が、限界に近づく。
(なまえ)
あなた
……っ

あなたの下の名前の足が、滑る。

その瞬間。
鳴海弦
鳴海弦
ーーあなたの下の名前!!

聞き慣れた声。

空から、影が落ちる。
(なまえ)
あなた
……っ!?

次の瞬間、
強烈な衝撃。

鳴海が、
あなたの下の名前の前に、着地した。

地面が砕け、砂塵が舞う。
(なまえ)
あなた
……パパ

思わず、名前がこぼれた。

鳴海は、振り返らない。

怪獣を真正面から見据える。
鳴海弦
鳴海弦
下がれ

短い言葉。

命令じゃない。
(なまえ)
あなた
……

あなたの下の名前は、一瞬だけ迷い――
それでも、下がらなかった。
(なまえ)
あなた
……一緒にやる

鳴海の口元が、わずかに歪む。
鳴海弦
鳴海弦
……仕方ねぇな

怪獣が、咆哮を上げる。

父と娘。
並び立つ。

霞双牙が、鳴海の視界に入る。
鳴海弦
鳴海弦
……その剣

鳴海は、初めて言った。
鳴海弦
鳴海弦
綺麗だ

あなたの下の名前の目が、見開かれる。
(なまえ)
あなた
今まで、言ってくれなかったくせに……
鳴海弦
鳴海弦
……言えなかっただけだ

一瞬の間。
鳴海弦
鳴海弦
でも

鳴海は、怪獣へ踏み出す。
鳴海弦
鳴海弦
見てなかったことは、一度もない。


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怪獣が、動く。

次の瞬間――
二人の剣筋が、完全に重なった。


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第五話・了

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