人間が鬼と聞いて思い浮かべるのは、大抵悪いことじゃね?
昔話もさぁ、最終的な敵扱いされたり?そんな感じで扱われてるし。
なんの因果か、真逆の性格の妖怪として生を受けて最悪…
もうそういうもんとして、怖がらせるようなことをして生きてこうか…とも思っていたが、そもそもが腕力もなければ、脅かす方法も浮かばない。
俺は酒と旅にでること、建築が好きなだけ。
なんで鬼に生まれたかねぇ…
ひっそりと旅を続けてる最中、この山をみつけた。
どうやら、この地域は珍しく鬼を祀ってるらしい。
災害から街を守ったのが鬼だとかなんだとか…
神社を除くと綺麗に掃除されていて、神様がいた。
俺をみて嬉しそうに、『わしも歳で隠居を考えていた。お前さんは鬼だし、丁度いい。ここの神様を変われ』とかいう。
一度は旅好きだし…と断るが、災害の多い時期だけ居てくれたらいいし、ここの名産の酒は美味いぞ!という口車に乗せられ、ここに住むことになった。
実際酒は美味いし、鬼なのに怖がらせなくていい。
災害があったとかいうが、見ても地盤も固く、川も穏やか。災害も起こりにくいため、仕事も少ない。たまに山に迷い込んだ人間を町に返すくらい?
後から知ったが、めちゃくちゃ桜も綺麗だ。
なんやかやで気に入って、神社近くの桜のよく見える日当たりのいい場所に東屋を建てた。
(…といっても、人間の目には見えないが。)
結界張ってりゃ何かあればすぐわかるし、神社で直に拝まれるのはくすぐったすぎるんだよなぁ。
桜が散り、春祭りも終わり、田んぼも綺麗にはれている。
今年もいい米から美味い酒が出来そうだ。
桜と共にやってくるおんりーとは別の、これからのやたら暑くなる季節が似合う人の元に向かった。
分厚い帳面を広げて難しい顔で紙を捲る、金色の髪の男。
周りは紙やら、飲みかけの水やら、多分いらないものが散乱している。
忙しすぎて片付けが追いついてないのと、整理が下手。ただ、仕事は早いしできるので、作業に特化した性分なんだろう。
こちらには気がついてないので、いつものように勝手にお邪魔した。
文字通り足の踏み場もない床を、酒盛りができる程度に掃除して場所を開けて座る。
伸びをして腰を下ろしたドズさんに、杯を渡した。
その昔、地獄で罪人の見張り番をしてたことがあった。
鬼ってだけで地獄に集められたが、マジで空気が合わなくてすぐに逃げ出した。
その時相談を聞いてもらって裏で助けてくれたのがドズさんだ。
頭におんりーの呆れた顔が浮かんだ。
まぁ、あいつのことだ、文句言いながらも片付けてくれるだろ。
ドズさんとも気が合いそうだし。
1人でウンウン頷く。
忙しすぎるドズさんの手綱を握れる人が誰かいるといいんだけど…
少しでも休めるように、ドズさんの杯が空になる前に酒を注いだ。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!