人間世界でいう夏、仕事が半端なく忙しくなった。
人が黄泉の国に大量にやってきて、裁かなくてはいけなくなったのだ。
死因が溺死やら倒壊した家屋の下敷きになったりやらが並んでる。
今年は酷い台風が来ているようだ。
人は生まれたら必ず死ぬ。
だけど、まだ人生が始まったばかりで査定する内容が何もない赤子や幼児を見ると流石に胸が痛む。
せめて極楽で穏やかに過ごしてくれるといい。
にしても…さすがに疲れた。
魂の入ってくる扉を一旦閉めて机に突っ伏して目を閉じる。
この前MENと酒盛りをしたのいつだっけ?
美味しい物を土産にいつもふらっとやってくる友人を思い浮かべる。
お酒美味しかったし、楽しかったなぁ。
きっと、今頃MENも自分の山や村を守ってるに違いない。
そのまま押し寄せる睡魔に身を委ねた。
少しだけ…のはずが気がつくとだいぶん時間が経ってしまっていた。
あの勢いで魂が押し寄せて来ていたから、これだけ時間が空いたんだ、相当溜まってしまってるに違いない。
確かにヘトヘトだったけど、自分の首を絞めた…
と、重たい気持ちで扉を開ける。
そこには、魂の列はあるものの、思ったより増えてない。
首を傾げながら仕事に戻ると、ザワザワした空気の中で話が聞こえた。
『俺たちが死んだ後、風がふいたんだと。そしたら雨が止んで川の氾濫も落ち着いたらしい』
『私が死ぬ前は村に黒い鴉がたくさん飛んできて、家族が気味悪がって逃げたら土砂崩れから助かった。私は足が悪かったから無理だったけど。家族が助かって良かった。』
『うちの孫はしきりに外を見て、天狗さんが手招きしとるっていっとった。孫が出ていったら、家が崩れたんや。ひょっとしたら孫を助けてくださったんかもしれん。』
…黒眼鏡をかけ気怠そうにタバコをふかす友人の姿が思い浮かび、自然と口角が上がった。
暫くしてまたいつもの日常に戻った。
仕事に一区切り付き、閻魔帳を閉じる。
今日は近くに住むけどなかなか出てこない友人宅に向かった。
ふぁ…っと欠伸をしながら起きてきた友人は、鞍馬天狗のぼんじゅうる。
黒い翼に黒い髪、黒眼鏡をかけている。
僕の声に気怠そうに目をこすっている横で、同じような黒眼鏡をかけた小さな鴉が、シッカリシロ!と言わんばかりに嘴で突いている。
そんな鴉を撫でながらぼんさんはこちらをみる。
優しいくせに、それを指摘すると照れて捻くれるし絶対認めないので、深くはつつかないでおく。
ぼんさんは小さく返事して、少し悲しそうに笑い俯いた。
図星だな…と見て見ぬふりして話をかえる。
ふふっと笑いながら部屋の奥に消えていくぼんさんを見送る。
さて、友人を元気づけるためには何がいいか…
ぼんさんの好きな物が並ぶ店を思い浮かべながら、ぼんさんの鴉を撫でた。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。